聖少女症候群
☥ rêverie ☥
聖少女症候群
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絵本に書いてあるのはここまで。ここから先が本当の物語だ。
賑やかなパーティーが始まった。各々楽しんでいるように見える。オーロラはデジーレとフロリナ、シャルマンと一緒にカップを片手にデザートを嗜んでいる。何やら楽しそうに話し込んでいる様子だ。
その横で苺の入ったバスケットをきつく握りしめ、オーロラを睨みつけているのは赤ずきんだった。目を吊り上げながら少女特有の甘い声でぼやき続けている。
「あたしが世界一可愛いっていうのに!あの姫、絶対に許さないんだから」
テーブルの端では、フォーチュンとブランシェの夫がワインを飲みながら笑っている。それを遠巻きに眺めながら、シンデレラとブランシェは皆とは違う丸テーブルでひっそりと食事をしていた。二人は初対面だったが、夫の悪口で意気投合。二人で楽しく盛り上がっていた。
「そもそも、一回しか会ったことないのに靴のサイズだけで人探しってバカにも限度があると思わない?家庭環境が悪くなければあんな奴と結婚しなかったわ」
「こっちもよ。同じような顔だから魔法を解くために結婚しただけであって、別に好きでも何でもない。本当に最悪」
「見てよ、オーロラ姫を。あの美しさ。ああ、彼女と結ばれたらいいのに」
「私はあのフロリナ王女が素敵だと思うわ。どうにかして手に入れられないかしら。ついでにあのバカ王子とも別れたい」
「そんなブランシェに悲報です。実は、離婚するにも時間がかかる。一国を背負ってるからってさ。離婚調停が1ミリも進まないんだよ」
「え、そうなの?!うわ、最悪。何かの拍子でころっと死んだりしないかなぁ」
「するよ」
「あなたは、誰?」
「赤ずきん。あたしなら、誰にもバレないように人を殺せる。ねえ、あたしと組まない?」
「私はブランシェ。ねえ、赤ずきんちゃん、その技はどこで手に入れたの?」
「やり方は教えないよ。あたしだけの秘密」
「なら別の質問をさせて。どうして、その技を手に入れたの?」
「食べるため」
「赤ずきんちゃんは人を食べたことがあるのね?」
「そうよ、漁師が殺したオオカミに殺されたおばあちゃんを食べたの。あの味がどうしても忘れられなくて、でも同じくらいおいしい人には出会えないの」
「分かったわ。私と組みましょう。私の夫をあげるから、あの人を殺して頂戴。それからもう一つ、あそこにブルーのドレスのフロリナ王女がいるでしょう?彼女の夫シャルマンも同じようにして欲しいの。勿論、誰にもバレないように」
「いいよ。あの二人ね。隣のお姉さんは?どうする?」
「私は……」
「シンデレラ、何を悩むことがあるの?あの野郎から解放されてオーロラ姫を手に入れることができるのよ?二度とはないチャンスじゃない」
「本当に、誰にもバレないかしら」
「あたしのこと疑ってんならまずはあんたから殺ってあげるよ」
「いえ、そんなつもりではなかったの。もし、本当にバレないのなら、私の母親と姉、いや継母とその娘二人もお願いしようかしらって考えていただけ」
「いいよ、殺したら食べていいんでしょう?だったらいくらでもやるよ」
「なら、契約成立ね」
「美しいオーロラ姫、これであなたは私のものよ」
「鳥に惹かれたくらいだもの、猫だってかまわないでしょう?」
「楽しいパーティーの始まりだ!」
姫二人と少女は、にっこりと微笑んだ。
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⚘ 祝福捧ぐ ベルの残響
✵ 純潔の羽 不浄に焦がる
❀ お招きしましょう 聖夜の祝宴
♔ 手向けよ賛美歌 絡め背徳
⚘ 見てて 今だけ 私の全て
✵❀ 煌々光る星が綺麗だね
♔❀ 無垢な夜に願いを込めて
❖ 世界ごと壊して
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ねぇ、お願い神様。
もう痛みもわからないの
ずっと祈ってた
罪滅ぼしだって構わないから
今救けてよ マリア
#聖少女症候群 #reverie
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