キリエを歩く【シノ】
くー
キリエを歩く【シノ】
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しばらくの時間、キリエには行けなかった。正直寒さの応えるキリエと今の勤務先の心地良さは比べ物にならない...。
「あーっ!疲れたぁー!ありがと、シノ!」
もうすっかり仲良くなった同期の子がシノにギュッと抱きついた。
「シノが居なかったらこの仕事終わらなかった!もう本当に大好き!好き好きー♪」
調子の良いものだ。しかし、ここまで好きと言われるのも悪い気もしない。学生時代あれだけの激動と激務を体験したのだ、これくらいなんて事は無い。心折れそうな時はいつだって彼女が...
「...?どうしたの、シノ?」
「ん?あ!あぁなんでもないの。それよりいいの?私を手伝わせてまで時間が欲しかったんでしょ?」
同期はあー!っと声をあげると、そそくさと帰り支度を始めた。
「んふふ!これで彼とデート行ける!シノも頑張ってね!今度の勤務での誘い...上手くいくって祈ってるから!」
抜け駆けなんて思ってない。とはいえ羨ましいものだ...彼女は上司への片想いを実らせ、今は毎日を幸せの中で生きていた。私も続かないと...シノには考えがあった。
翌日、シノと憧れの先輩は浜辺をひたすらに歩いていた。海から打ち上がる異物や水の加護、精霊の破片、潮の流れや美化などなど...観光にも力を入れている海のエリアならではの仕事だった。海の様子を観察しつつ掃除をし、尚且つ海の事故のないように精霊と加護の様子まで見るというハードワーク。二人一組で行い、その日一日の業務はこの一つの仕事で終わる程である...つまり、今日一日は彼とずっと一緒。
ソワソワしていたシノだが、虚しいほどに時間が過ぎる。ある作戦を話そうとするたびに、彼に見とれてしまったり、彼から気遣いの言葉をかけられて話せなかったり...上手くいかないまま、空は赤く染っていく。
「...お疲れ様、シノと2人だけで仕事するのは初めてだけど...とても手際が良くて驚いた。優秀な後輩が配属されるのは聞いてたけど。僕より現場慣れしてるというか...」
そう労いながらシノの持つゴミ袋を持ってやる先輩。
「まるで逆にシノが先輩みたいだ。仕事ぶり、いつも尊敬するよ」
それはそうだ、街の掃除だって何回も出向いたのだ。あの人と2人、箒を持って階段の落ち葉と格闘して...仕事ぶりだって...いつも彼女は...
「先輩!」
シノは真剣な顔で彼へと向き直した。作戦を実行するのは今だ。
「あの...もし次の休み...良かったら私と一緒にキリエに行きませんか?」
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クエストにお付き合い頂き、心から感謝致します。貴女が片想いの彼に起こした作戦とは何ですか?
是非、貴女の答えを教えてください。その歌声にのせて…
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