藍色の空の向こう
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
藍色の空の向こう
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__𝕀 𝕨𝕠𝕟𝕕𝕖𝕣 𝕚𝕗 𝕀 𝕔𝕒𝕟 𝕣𝕖𝕒𝕔𝕙 𝕥𝕙𝕒𝕥 𝕤𝕜𝕪 𝕤𝕠𝕞𝕖𝕕𝕒𝕪.✩₊*˚
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降りしきる雪の中。璃月の手は、強く強く握られていた。溶けていくような微睡みの中、優しい温もりが璃月を繋いでいた。きっと冷たくて寒くて怖いのに、それでも璃月は幸せだと思った。
二度と離さないように、二度と離れないように。璃月は繋いだ手を、強く握りしめた。
「……璃月、璃月」
耳元で囁かれた、優しい声に目を覚ました。陽の昇り始めた空は、少しずつ青く色付き始めている。ぼやける視界のピントを合わせようと、数度瞬く。璃星が、遠慮がちに璃月の服の袖を引いていた。夢の中と同じで、右手は強く握られたまま。璃月が眠っていた間もずっと、繋いでいてくれたのだろう。璃月が、怖い夢を見ないように。そんな璃星の優しさが嬉しくて、夢と同じくらい強く手を握り返すと、璃星は璃月を抱きしめた。昔から、璃星は璃月よりも少しだけ甘えただ。
世界にたった一人の、大好きな片割れ。これからも璃月はきっと、ずっと璃星と一緒に生きていくのだ。
璃星が目を覚ました時、まだ璃月は夢の中だった。璃星の方が少し早く目を覚ましてしまったらしい。もう一度寝ようか、それとも璃月を起こそうか。迷った末に、すやすやと幸せそうに眠っている璃月を眺めることに決める。
下の階からは、トーストの焼ける美味しそうな匂いが漂ってきている。昨日は早く寝たから、お腹が空いてしまった。璃月も同じだろう。もう少しだけ寝顔を見ていたい気もするけれど、きっと起こした方がいい。
「……璃月、璃月」
そう声をかけ、まだ夢うつつの状態にいる璃月の袖を引っ張る。何度目かの瞬きの後、ようやく意識が覚醒したらしい璃月は、繋がれていた右手を見てふわりと優しい笑みを浮かべた。璃星の大好きな笑顔。それがたまらなく愛おしく思えて、璃星は璃月をぎゅっと抱きしめた。同じくらいの力で抱きしめ返される。
ああ、やっぱり璃星は璃月のことが大好きだ。
「二人とも、そろそろ起きて」
一階から藍空の声が聞こえる。朝ごはんの準備が出来たのだろう。璃月の瞳が嬉しそうに煌めいた。
手を繋いだまま、小さな階段を降りていく。何気ないいつもの朝が、こんなにも幸せだった。
ずっと、こんな風に穏やかな日々が続けばいい。そんなことを願ってしまう璃星は、我儘なのだろうか。我儘でもいい。璃星が生きているのは、璃星の人生なのだから。
◇◇◇
真っ白なお皿に並んだ、四人分の朝食。藍空の作ったオムレツにトースト。紅愛のお気に入りのマグカップには、淡い色のコーヒーが湯気を立てている。藍空は紅愛の好きな味を知っていて、いつもぴったりのミルクと砂糖を入れてくれる。なのに、藍空は自分の分には砂糖を入れない。この間紅愛が一口味見してみたら、苦くてびっくりしてしまった。
四人分の皿をテーブルに並べ終え、藍空の元に戻ると。藍空は冷蔵庫から、フルーツの入った器を取り出してきていた。昨日の夜から冷やしていたのだろう。透明なガラスの器に盛られた、色鮮やかな缶詰の果物。紅愛の好きなみかんと桃もある。藍空が買ってきてくれたのだろう。紅愛の好きなものを、覚えていてくれたのだろうか。心が弾んで、目の前が明るくなる。飛び跳ねたいような衝動に駆られる。慌てて四人分のスプーンと器を取ってくると、藍空はありがとうと言って笑った。紅愛の好きな声だ。
「紅愛が、分ける」
取り分ける用の大きなスプーンを握りしめてそう宣言すると、ちゃんと平等に分けてね、と藍空はまた笑った。出会った時はほとんど笑顔を見せなかった藍空だったけれど、今ではこんな風によく紅愛に笑顔を見せてくれる。紅愛がいい子にしているからだろうか。だとしたら、嬉しいことだと思った。
一緒に暮らし始めた時よりも、少しずつ紅愛に出来ることが増えてきている。洗濯物を畳むのだって、今では紅愛に任された仕事だ。
まだ火に近付くのは怖いから、料理の手伝いは出来ないけれど──それでも、もっと頑張ればきっと料理だって出来るようになるはずだ。この間は、卵が割れるようになったのだから。
四つの器に果物を入れ、テーブルの準備をしている藍空の方へ持っていく。準備の手を止めた藍空は、優しく紅愛の頭を撫でてくれた。
紅愛は知っている。藍空は、紅愛が好きだからこうしてくれるのだと。そう伝えられたから。
名前の付いたぬくもりに満たされて、紅愛は幸せそうに笑った。
◇◇◇
藍空達が四人で暮らし始めてから、数か月が経とうとしていた。
まるで家族のような、小さな共同生活。新たな日常が始まってから、藍空の日々は以前とはすっかり様変わりしていた。
一人だった頃は適当に済ませていた食事が、きちんとしたものに変わった。誰とも話さないまま終わる日が無くなった。胸を塞ぐような寂しさや虚しさが浮かぶことがなくなった。
二人揃って何を考えているのか読みづらい双子といい、突然突拍子のないことを言い出す紅愛といい。他人と一緒に暮らすということは、藍空が想像していた以上に難しいものだった。
「藍空、これ美味しい」
ふと目に留まって買うことにした、紅愛が好きだと言っていた果物の缶詰。彼女のために買って来たものだと気付いているのだろうか、紅愛は満足そうな顔を浮かべて笑っていた。
こんな風に同じ場所で笑ってくれる誰かがいることは、きっと素敵なことだった。
テーブルのすぐそばに置かれたラジオが七時を告げている。朝のニュースは相も変わらず、無くならない犯罪や政府の汚職事件を報じている。
世界は今日も変わらずに憂鬱で、昔の藍空にとってはきっと最低な地獄だ。
だけど今、変わらないぬくもりが藍空のそばにある。失くしてしまった家族の形が、目の前に広がっている。
きっとこれは、些細な偶然が集まって作られたもの。奇跡と呼ぶには大袈裟な、そんな偶然の積み重ね。
そうして出来た確かな幸せは、今日も藍空の近くにあった。きっと藍空の意思が導いた部分もあるのだろう。
誰かの意思や想いや願いが重なって、世界は少しずつ変わっていく。藍空もきっと、どこかで世界を変えている。
藍空の見つけた幸せが、明日も隣にあればいい。そのために、藍空は今日を生きていく。
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✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
🔗生きづらいと嘆いた
⛓昨日だってその場しのぎ
🔥⚖夏の面影ばかり眺めて膝を抱えてる
🔥揺らいだ夢行方も知れず
⚖天邪鬼な自分が道をふさいでく
⛓🔗夕暮れ伸びる影法師の中で過去の僕がわらう
⛓🔗🔥⚖あの日追いかけた夢の終わり方が何度考えてもわからない
時が僕を透明にするなら
いつかあの空にも辿り着けるかな
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♊︎Gemini #星巫女_璃星 #星巫女_璃月
⛓璃星/🔗璃月(cv.唄見つきの)
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✯𝕋𝕒𝕘✯
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