三日月 【－5】男性キー

絢香

#インスパイアストーリーズ #秋のトレモロ 【5】 あれから一週間が経った。 転勤といっても、 住んでいる場所は変わらないんですけどね、 と付け足すように呟いたその人。 今はもう新天地で働いている頃だろう。 敢えて言ってくれたその言葉が、 何を意味しているのかを理解するのに、 時間はかからなかった。 街の明かりが灯り始めてから、 ギターケースを抱えていつもの場所へ。 着いたらいつものルーティン。 ケースからギターを取り出してチューニングして、 良い感じに整ったら歌い出す。 いつまで経ってもその人は来ない。 頃合いを見てギターをケースにしまう。 煌びやかな街を背にして、とぼとぼ一人で帰る。 あの日の夜、ふいに流れた涙の訳を考える。 けれども答えは出ない。 恋と認識するには、あまりに一瞬過ぎて。 愛を語るには、あまりに曖昧で。 結局、 名前をつけられないこのキラキラした不安定な感情の、 行き場を定められないまま、 明日もまた、 今日と同じように、 歌いに行くのだ。 ＊歌詞＊ ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道 二つに分かれて 別々の方歩いてく 寂しさで溢れたこの胸かかえて 今にも泣き出しそうな空見上げて あなたを想った… 君がいない夜だって そう no more cry もう泣かないよ がんばっているからねって 強くなるからねって 君も見ているだろう この消えそうな三日月 つながっているからねって 愛してるからねって ＊＊＊ #ビック絢香