異ノ頭クリスマス大作戦
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異ノ頭クリスマス大作戦
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ㅤ今朝の急激な冷え込みに、ダイアナは顔を顰めた。レッスンの時間が迫っているため足早に家の中戻ると、押し入れから適当に引っ張り出してきたのは、少しよれた兄のセーターだった。
ㅤ普段であれば人通りの多い場所は通らないのだが、今日は足早に商店街を駆け抜ける。
ㅤクリスマスまであと一ヶ月ということもあり、町はクリスマス一色。商店街の中央広場には、毎年恒例の特大もみの木が飾られていた。
ㅤ思わず足を止めて眺めていると、騒がしい声が聞こえてきた。
ㅤそこには、木によじ登ろうとする''てるてる坊主''姿の少年と、それを必死に止める二人の少女の姿。
「なんでとめるんだ! クリスマスのかざりをもちよれば飾ってもいいって、ちょうないかいちょうのオッサンが言ってたんだぞ!!」
「で、でも僕……それ短冊だよな!? 危ないし! 七夕と間違えてるって絶対!」
「まちがえてない!! ぜったいたんざく飾るんだ!!」
ㅤどうやら揉めているのは近所に住むマルクルという男の子と、最近ヘルメットガールズの二期生候補としてレッスンに励んでいるサラフィナとシャンプーの2人のようだった。
「なんだってそんなに短冊にこだわる訳? ワタシたちクリスマスに、この中央広場でライブするのに……このままじゃ短冊ツリーじゃない……」
ㅤ子供にも容赦のない彼女。そう言われると、マルクルは涙目になった。その様子を見て慌てるサラフィナ。さすがに見るに見兼ねたダイアナは、彼女らに声をかけた。事情を聞いたダイアナはしゃがみこみ、マルクルに目線を合わせて聞いた。
ㅤ「──────なるほどなるほど。 それで、ボクはどうして短冊をクリスマスツリーに飾りたいの?」
「……お母さんが、おばさんとはなしてたの、きいちゃって……」
ㅤ彼が話したのは、幼い彼には酷な話だった。
「来年の七夕祭り、オレと一緒には行けないかもしれないって……さいきん、お母さんよく病院にいってて、ぐあいも悪そうで……」
「……! それって……」
ㅤそう言いかけるシャンプーの肩に、サラフィナが手を置いて制する。シャンプーはなにか言いたげだったが、サラフィナが首を横に振ると大人しく従った。
「オレだって、オレだってそれくらいわかるんだぞ!! お母さんと毎年いっしょに天の川を見て、短冊におねがいごとするんだ。高いところにかざるとおねがいごとが届くんだって言ってた!! だからクリスマスツリーに飾るんだ!!」
ㅤ震えた声で語る彼のその話を聞いて、もうその行為を止められる三人ではなかった。
「……そうだね。でも、短冊1枚じゃ寂しいんじゃない?」
「え?」
「よーし! じゃあ、お姉ちゃんたちもお願いごとしちゃおうかな! 紅白歌合戦、成功しますようにーとかさ!」
ㅤダイアナはそう明るく言い放つと、段取りを立て始めた。その声に、表情は見えないがマルクルが顔を輝かせたように思えた。
「二人とも、短冊配り、手伝ってくれるかな?」
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#異形頭企画 #異ノ頭クリスマス大作戦
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