特別ナ夜
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特別ナ夜
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drama …
満月の光には不思議な力があった。
宙「Haha〜♪ 今夜は自由です!」
窓際に座っていた人形が立ち上がり嬉しそうに声を上げた。するとその人形に続いて他の人形ものそのそと動き出した。
ひ「今月はやけに酷かったね〜」
弓「えぇ…。わたくしなんて犬に食べられそうになりました…」
各々主人に対する愚痴を零しながら伸びをしたり、身なりを整える。
ひ「隣の家は大事にされてるみたい、羨ましい!」
宙「宙たちももっと大切に扱って貰いたいな〜?」
うんうん、と一同が頷く。すると1人の人形はあることに気がついた。
ひ「あれ、伏見先輩なんか少し痩せたんじゃない?」
弓「…左様でございますか?」
人形でも痩せる嬉しさは持ち合わせている用で何処か嬉しそうに訊ねる。しかし嬉しかったのはほんの一瞬だった。
宙「痩せたんじゃなくて、ここから糸が出てます!」
示された先は背中の縫い目で、僅かに穴が空いていた。どうやらそこから綿が溢れ出して綿が減ったから、痩せたと思い込んだようだ。
弓「なんてことでしょう…あぁ、きっと犬に食べられそうになった時に出来たのでしょう」
このままでは痩せるどころか萎れてしまう。そう思うが彼達、人形には為す術なくただただ溢れ出た綿を内側に詰め込んでいく事しか出来なかった。
ひ「俺たちは人形だからね、こういう事があっても仕方ないよ。…さぁ、せっかく今夜は自由だ!この時間を楽しもうよ!」
泣きそうなほど落ち込んでいる人形に、また違う人形が優しく励ました。
弓「えぇ、そうですね。このような事で今夜を無駄にしてはいけませんね」
そう言うと穴の空いた人形は窓際に移動してくるりと一回転した。
宙「満月の夜しか動けないから、動ける今を楽しもうな〜♪」
この掛け声とともに他の人形達も満月の光が差し込む窓際に駆け寄り、みんなで歌って踊って自由気ままに過ごした。まるで人形達だけのステージのようだった。
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[cast]
人形 伏見弓弦(cv.きり)
人形 葵ひなた(cv.ゆきかぜ)
人形 春川宙(cv.柊)
#時代を超えし物語
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