ep2《伝承者と後継者》
華後閑研究所 BGM: HomeMadeGarbage SoundTracks様
ep2《伝承者と後継者》
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ep2《伝承者と後継者》
年に数回ある、母校からの講演依頼。
今となっては慣れたものである。
そう思いながら、新任の先生の後を追うように教室に入る。
昔と変わらない教室。
私は養成コースに転科しなかったけれど……同期のあの子たちは…今何してるのかしら。
人一倍おっとりとした…新鷲さん、あの子とかどうしたんだろうな…。
そう思考を巡らせ、ぐるりと教室を眺めた。
「皆さん、こんにちは。
ここゲンヴィル学園のOGで、今は華後閑市資料館で学芸員をしている▆▆▆▆といいます。」
そう、俺らに向かってその人は会釈をした。
センコーが言うには、話を聞いて感想を書いて提出……学生にとっては面倒臭い時間。
◇◇◇
自分が学生の頃も、こういった授業はとことん嫌いだったし面倒なもの他なかった。
教壇から見える景色は面白い。
頑張って聴いてる子、眠気と戦っているが負けそうな子、諦めて寝ている子、つまんないや!と外を眺める子と様々。
「この華後閑市に昔からあるお話は、平安時代まで遡ります。
1人の術士…今で言う…陰陽師とかだと分かりやすいかな?
まあ、その人から始まったの。
ここはその人から発展して行った…!と過言でもないわ」
そう言いつつ、後輩たちにプリントをサッと渡していく。
◇◇◇
平安時代手記…と、明治時代手記。
口語訳に直された文章なのだろう。
左ページに口語訳、右ページには、古典の時間にお目にかかったような、文字が連なっている。
俺は、全くもって興味無いんだけれど…。
OGは「後は〜」と言いながら、プリントを追加していく。
もっと喋りたいのだろうが、無慈悲な事に終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あー終わっちゃった……もっとお話したかったのにな。
あ!最後に。手記に載ってる文なんだけれどね。
【かの術者は施した。
厳命により施した。
術に使われたのは数多の小さき命。
その術は、面妖なモノへと成り果てる。
また幾星霜、風景を変えその土地に根付いた。
災い転じて福となす とは言ったものである。
私が語れるのはここまで。
見つかれば…どうなる事やら。】
……えへ。どう?かっこよかった?
え、皆スルーするの?ドライだねえ。
まぁ……お話聴きたいよって子は、ぜひ我が資料館にいらっしゃい。
ここは、養成コース…のようだし、ここに集められた以上、知っておいた方がいいことも沢山あるしね。
最後に配ったプリントも見てみてね。
あなた達には必要なことだしね。
じゃあね〜」
OGは、そう言い放って颯爽と、教室を出ていった。
各々疲れたのか、ため息を吐いたり、背伸びをしたりする。
◇◇◇◇◇
さっき、OGが言ってたな…。
そう思い1番最後に配られたプリントの束を捲る。
【国防とfleur、それに伴う蠱毒実験】
【実験によって消えた16人の子供たち】
【fleurと非fleurの結末】
……は?実験?消えた?……どういうことだ?
___くん、と俺を呼ぶ声が聞こえる。
顔を上げれないほど、その文章に釘付けになった。
ep2 《伝承者と後継者》 ℯ𝓃𝒹
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