イントロダクション
太陽の船
イントロダクション
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時間は残酷だ。社会は冷酷だ。いつだって僕らの大事なものを奪っていく。
―僕らの育った玉山町<ギョクザンチョウ>が、地区改定で榮慈市<エジシ>に合併されたのはまだ4つの頃だった。それ以降約10年にわたって開発は進み、幼い頃に遊んでいた公園も小さな公民館も、通っていた小学校も全てなくなってしまった。なかでもショックが大きかったのは、玉山町のシンボルにもなっていた船の銅像が撤去されるという話だ。なくなる日が来るなんて到底考えていなかったのに、気づけばあれよあれよと採択は進み、秋には撤去される運びとなった。
「何とかしなきゃ」
台座に身体を預けていた少年はそう呟いて、弾き出されたように動き出す。数日と立たないうちに、彼は頼りになる仲間を従えて、団地近くの工場地帯にアジトをかまえた。あの船を守るために、変わっていく街に抗うために。
『僕らは太陽の船。迫り来る変化の波にこの世界が沈もうとも、悠々とその上を走る存在だ』
BGM:甘茶の音楽工房(https://amachamusic.chagasi.com/)様より
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