ネクロの花嫁
奏音69 / 〔F〕minor
ネクロの花嫁
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〔F〕minor Summer Fes 2022 〔F〕andango
10.ネクロの花嫁
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夏が終わる。
暦の上では、とかまだまだ暑いから、とか、そんなことはわたしたちには関係なくて。
幕の隙間から覗くステージにあと一度熱いライトが点いて、そしてあと一度消えたら、夏は終わるのだ。
薄暗い舞台袖に聞こえるのは、自分とあとふたりの息遣いだけ。顔なんてほとんど見えないなかでも口角が上がっているのはわかるんだから、ライブってすごい。疲れてるけど、絶対にそれだけじゃない。
「最後かあ」
「最後だねぇ」
「…そう、ですね」
ペットボトルを置く音、ストローが飲み口で揺れる音、靴底がリノリウムを擦る音、お互いどこにいるかも定かでない、ひそひそ声の作戦会議。
曲間の時間はもうそれほど残されていなくて、最後の衣装チェックがぱたぱたと終わっていった。
なにを考えていても、いくらなにかを願っていても、私たちの愛するステージはこういうもので、刻一刻と終わりに近づいていく。
「ろ〜なちゃん」
「………行くよ」
はっと顔を上げると、暗闇に慣れてきた目がぼんやりとふたりのシルエットを映し出した。
その背中が思い込んでいたものよりずっと大きくて、きっと私はいまちょっと間抜けな顔をしている。
ねえ、私たち、年月を経ましたね。
あなたたちはもともとよりさらにとってもとっても頼もしくなって、私はそれに甘えてだいぶ自由に、なんだか、私らしくなりました。
たくさん迷いながら、はじめて歌ったときから。
わたしたちは知らないうちにちょっとずつ変わっていく。
集うべき旗と踏みしめるべき土台を信じられるから、最後の集合時間だけ決めて好きにできるようになった。
「………終わらないで」
またやればいいから、と普段なら自分が拾いにいくような小さくて、弱気な祈り。聞こえていなかったみたいでちょっとだけほっとする。
それでも、いくら希っても。あと何秒か後にはライトが閃いて、オケが鳴り出して、私たちは歌うのだろう。
これから踏み出すこの1歩は、夏を終わらせる1歩。
「ええ」
じゃあ、そうしよう。
この再生の歌をもって、この夏に幕を下ろそう。
懐古は───もうちょっとだけ、後にしよう。
これからもしなにかが起きたとしても、いつかなにかが変わったとしても、そして、この夏がもうすぐ終わるとしても。
ひとりじゃないから、全然怖くないよ。
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💙水縹路名
❤紅緋まある
💜二藍翼颯
【歌詞】
❤️💜物謂わぬ口唇に生気(いき)を吹き込んで
今宵あなたは蘇る あの頃の姿で
💙白肌の娘が咳をした
「この身体貴方に捧げるわ」
❤️白服の医者が囁いた
「迎えに行くよ」
💙白肌の娘は朽ち果てた
世界の誰にも見棄てられ
💜白服の医者は憐れんで
誰も知らない居場所で眠らせた
💙朽ちてもまだ 美しい顔で
❤️ふたりしかいない
💜霊廟(れいびょう)で
❤️💜医者は恋をした
💙❤️💜それは永遠の恋か 禁断の行為か
❤️💜また逢いたいと願うだけ
それが罪なのでしょうか
💙💜物謂わぬ口唇に
💙❤️生気(いき)を吹き込んで
💙❤️💜今宵ふたりは結ばれる
💙祝福もされずに
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