まほう
The Epic of Harmosphere 第2章
まほう
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第1節 音楽は魔法
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─吟遊詩人は静かに唇を開いた─
さぁ、これより歌うは
先ほどの物語から遡り約1000年前のこと
滅びの魔女と救国の魔女の真実の物語
黒髪に緑色の瞳の魔女と白髪に赤色の瞳の魔女
2人は出会い、運命の歯車は動き出す───
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その老婆は暖炉の側で縫い物をしている。
窓の外では吹雪の風の音がびゅうびゅうとなっているが、石造りの家はびくともしない。暖炉の炎をぱちぱちと燃える音だけが部屋を静かに満たしていた。はずだったが……
「ねぇ先生!お話して!」
「きゅうきょくの魔女のお話して!」
「きゅうきょく、じゃなくて救国でしょ~」
バン!と爆発音のような音と共に扉が開けられると、子供たちが部屋になだれ込んできた。老婆は眉間に皺を寄せてため息をつく。
「全く……あたしが何をしているのかお前たちは見えないのかい?この服がなければお前たちみたいなチビは雪で凍えちまうんだよ」
そう言って老婆はボロボロの、けれど丁寧に扱われた動物の毛で出来たコートを見せる。彼女は大きくなった子供達の為にコートの丈を調整してやっているのだ。
「ええ~!寝る前にちょっとだけ!」
「国に不吉をもたらす悪い魔女をやっつけたんだよな!カッコイイよな!」
それでも子供たちの勢いは止まらない。しまいには持ってきた枕でお互いを攻撃する「救国の魔女ごっこ」を始める始末だ。
老婆はまたため息をつくと、縫い物の手を止めてメガネを傍らの机に置いた。
「なら、少しだけだ。少しだけ聞いたらさっさとベッドに行くんだよ。分かったね?」
そう言い含めると、子供たちは首が折れんばかりにガクガクと力強く頷き、そして枕を暖炉の前の敷物の上に置いて寝っ転がった。お話を聞く準備は万全と言ったところだ。
それを見届けてから老婆は口を開く。
「昔むかしある所に……」
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その少女の持つ最も古い記憶は「白」だ。
見渡す限り雪に覆われた銀世界。太陽の光が差すことのない灰色の曇り空。そして、自分の真っ白な髪と肌。その少女が物心ついてから目にしたものはそんなものばかりだった。
少女は西の国と北の国の国境に位置する「白い牙」と呼ばれる山脈にいた。彼女がそこにいた理由は彼女にも分からない。けれど、彼女の白い髪と血のように赤い瞳は北の国では不吉だと忌み嫌われるものだ。恐らくその外見を忌避した両親に山に捨てられたのだろう。
白い牙は絶えず吹雪が吹き荒れる極寒の地だ。人間も動物も住むこともままならない。魔女たちは魔力によって体温を維持することができるが、魔力も有限である。長い時間は滞在することができない。だからこの山脈は生き物の存在しない死の山なのだ。
だが、その少女は生きていた。彼女は生まれつき尽きることがないほどの膨大な魔力の加護を受けていた。そのため、暖かな寝床もろくな食べ物もない土地で生き延びることが出来た。
けれど、生き延びている。それだけだ。その少女は物心ついてから自分以外の生物と交流することもなく、常に吹雪の吹き荒れる白い世界をあてもなくさ迷っていた。
だが、ある日「白」に別の色が混ざった。
「ねぇ貴女、魔女よね?名前は?」
青みがかった黒い髪と暖かい緑の瞳。
それが少女が次に覚えた色だ。
「村の人に変な生き物がいるからどうにかして欲しいって言われていたんだけど……こんな小さな女の子だったなんて……」
少女はぼんやりと目の前の生き物の口の動きを見ていた。良く鳴く生物だな、と思いつつ。たまに雪山に迷い込む鳥はこんなに複雑な鳴き声を発しない。
「困ったわね、話せないの?呪い?」
「…………?」
「……仕方ないわね。ここに居ても村の人たちを怖がらせちゃうから、私の所に来ない?」
「…………」
「うん、よし!じゃあおいで!」
ぼうっとしている間に良く鳴く生き物は、棒のような物を突然取り出すとそこに少女を乗せて飛んでいく。少女はびっくりして生き物にしがみついた。鳥のように飛んでいる!更にしがみついた生き物が柔らかくて、皮膚がぴりぴりするような今まで触ったことのない温度なのにまたびっくりしてしまった。
「……っ!うぅ~!」
「怖い?大丈夫よ、貴女も魔力をコントロール出来ればすぐ乗れるようになるわ」
そうして連れてこられたのは木を積んで作った大きなものだった。木を組んで洞窟のようなものを作って、この生き物は住み着いているらしい。賢いなと少女は感心する。彼女がそれは家と言うものだと知るのはもっと後だ。
「まずはお風呂かしら。着替えもしないといけないし、それから食事も……」
「ぅ……ぁ……?」
「これからはここがあなたの家よ。私はイヴ。よろしくね。わかる?イ・ヴ」
「イ、ィ……ヴ……」
オウム返ししただけで片言だったけれど、それが初めて少女が口にした言葉だった。
イヴ。何よりも大切になる人の名前。
こうして不吉の象徴である少女と心優しい魔女は出会ったのだった──。
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❄ネージュ(cv.瑠莉)
🦢イヴ・リーンカイン(cv.IRYU)
🎼ルチア・ゴットリープ(cv.黒川かずさ)
🎶マリア・テンポルバート(cv.ここあ)
🪙ヒルデ・イスカリオテ(cv.はいねこ)
✝️アリエル(cv.海咲)
🎹ファシリア・ネバーランド(cv.ゆきかぜ)
🐦モリー・ブルーフェザー(cv.神楽坂和音)
all:希望論を言って見たいの
それが本当の音楽と言えるなんて
信じたいだけなんだ
これが魔法?
🎼呼吸や
🎶鼓動や
🎼🎶景色の全てを拾い集めて
🐦誰もが
🎹好きに信じたものが
🐦🎹尊く見える
✝️ぐちゃぐちゃの
🪙どろどろの
✝️🪙これってなんなの?
🦢傷つけたり
❄愛し合ったり
🦢❄笑いあったり
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◇第2章 プレイリスト◇
https://nana-music.com/playlists/3840346
◇素敵な伴奏ありがとうございました◇
min様
https://nana-music.com/sounds/05c75726
◇ 𝕋𝕒𝕘 ◇
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