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The Epic of Harmosphere 第1章
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Epilogue 「8人の魔女」
東の国が宰相の謀略により、あわや王都全体が吹き飛ぶ大惨事になりかけた──後世で「黎明の変」と呼ばれることになる──事件から1年の歳月が経ち、ヴィオレットは再び東の国の王城にやって来ていた。
ただしお披露目の時や1年前とは異なり、テラスからは北風ではなく暖かな春風が吹き込んでヴィオレットの桜色の髪をそよがせている。
「それにしてもほぼ1年で城を建て直すなんてアビゲイル様の発明は本当にすごいです!」
「え?何か作ったっけ?」
「はぁ……人間頼まれて作ったでしょう。重いものを吊り下げて移動させる魔術科学の機械です。鶴のような形をしているから『クレーン』という名前にすると言ったのはアビィじゃないですか」
「ふふふ、アビゲイルは相変わらずじゃのう」
アビゲイルとソフィアのやり取りに、傍らにいる黒髪の女性が笑い声を漏らす。すらりとした白いドレスと藍色のローブを身にまとい、腰まである艶やかな黒髪がヴィオレットと同じく風に揺れている。
「…………」
「どうしたのじゃ?」
「い、いえ!ソル様の姿にまだ慣れなくて……この1年ですごく変わられたので……」
「まぁいま儂は絶賛成長期じゃからな」
「1000年経ってから成長期を迎える魔女だなんて聞いた事ありませんが……」
「んふふ、いいんじゃない?この世界には想定外のことがないと面白くない!」
呆れたようにため息をつくソフィアの横で、対照的にアビゲイルはけらけらと笑う。
「まぁ、ルナが死んだ後に自分だけが成長するのが耐えられなくて無意識のうちに成長を制限してたってところじゃない?」
「……ならばこれも儂がルナのことを受け入れられた証の一つということじゃろうな」
するとその時、どこからか小さな藍色の塊がソルの腰の辺りにぴょんと飛びついてきた。ソルとお揃いのローブに身を包んだルナだ。
「何だ何だ?ソルったら我を仲間外れにして何を話しておるのだ?」
「やきもちを焼くでない。ルナの話じゃ」
「我の話か、ならば許すぞ!」
「うふふ、仲がよろしいのは良いですけれど大切な伝言を伝え忘れておりますわよルナ様」
ソルがルナを抱きしめ返し、そんな会話をしているとそこにアリソンとジャンヌも現れた。
騎士の正装に身を包むジャンヌと、そんなジャンヌに手を引かれてエスコートされるアリソンはまるで絵本の中から抜け出てきた王子様とお姫様のようだ。
「むう、イチャイチャしていたのはお前たちも一緒ではないか」
「ル、ルナ様!イチャイチャというのは、その、語弊があると思うんだが……」
「そうですわ。長い間会えなかった分の親交を深めているんですのよ」
「はいはい、そういう事にしておこう。えーっとそれで伝言というのは確か……」
「お城の方からそろそろ式典の時間だから皆を呼んできて欲しいと頼まれたんですの」
「……今頃アンネが心配して会場でソワソワしているだろう」
「もうそんな時間でしたか、急ぎましょう」
急ぎ足で向かうのは今日の式典の会場。
市民たちも集まることの出来る広場で新しくなったお城のお祝いをするのだ。そして、8人は黎明の変を解決した英雄としてその式典に招待されているのだった。
「あぁ、良かった!皆が全然集まらないからどうなるかと……もう式典は始まっていますよ」
「先生!」
広場に面した扉の前でジャンヌの言う通りソワソワと落ち着かない様子だったアンネが、やっと集まったメンバーに呆れと安堵を混ぜた複雑な微笑みを見せた。
きっちりとしたドレスと白のローブを着たアンネはいつもよりもっと綺麗なので、ヴィオレットは今日1日どぎまぎしてしまっている。
「ヴィオラ、今日はきっとたくさんの人が来ていると思うけど大丈夫?」
「は、はい!大丈夫だと思います!」
「あぁ、ローブのリボンが曲がってるわ。直すからこっちに来なさい」
せっせとアンネがヴィオレットの服を整えているのを、全員で見守っているとそこに一際大きな声が広場の方から響く。去年、宰相が失脚したあとに政の実権を握った若い王子の声だ。
「……それでは今回の功労者、我々の偉大なる恩人、そして心優しき友人である魔女の皆さんをお迎えしましょう!」
その声と同時に扉が開かれた。
飛び込んで来たのは青い空と春の鮮やかな陽光とそよ風。そして嬉しそうに手を振るたくさんの民衆たちだった。
「魔女様ー!」
「この国を救ってくれてありがとう!」
「城を直してくれてありがとな!」
その光景に8人があっけにとられていると、そこに小さな女の子が駆け寄った。
「まじょさま、おとうさんとおかあさんをたすけてくれて、ありがとうございます!おれいにおはなをどうぞ!」
「あ、ありがとうございます!こんな、すごく綺麗なお花……」
花束を受け取ると少女の指先からたくさんの感謝の気持ちが流れ込んだので、ヴィオレットは思わず言葉を詰まらせてしまった。
「んふふふ、こんなに歓迎してくれるならお返しをしなくっちゃね~!」
「あっ、こら、アビィ!」
そんなヴィオレットを横目に、アビゲイルはどこからかとりだした箒にソフィアを乗せるとくるりと空中で一回転してみせる。すると空に色とりどりの花火が打ち上がる。
突然の花火に広場にいる人々は驚きつつ、嬉しそうな声をあげる。
「あら、あんなにはしゃいで大丈夫かしら?」
「まぁ……祝いの日だから良いのでは?アンネがどう思うかは分からないが」
「今日くらいは構わないわ。そうね、せっかくだから私からも贈り物をしましょう」
アンネは杖を取り出すと空中に文字を綴る。
『物語は美しく彩られ幕を閉じる』
金色の文字は光の粒になり広場に降り注ぐと、その瞬間、強い風が吹き広場に咲く花たちの薄紅色の花弁が抜けるような青空に紙吹雪のように舞い上がる。
真っ青な空に打ち上がる色とりどりの花火と舞い踊る花弁。その光景に人々はさらに喜びの歓声をあげた。
「……まさかこんな日が来るなんて。貴女の言う通りだったわプリムラ」
「んん?先生いま何か仰いましたか?街の人達の歓声がすごくて皆さんの声が聞こえなくて……」
「いいえ、何でも。でも……」
花束を抱えながら自分を見上げるヴィオレットの手を握り、アンネは答える。今日という幸福な日を迎えられたこの気持ちが伝われば良いと願いつつ。
「生きていて良かった、と思ったの」
☽︎︎
さてその後8人の魔女たちはどうなったのか?
もちろん物語の締めくくりは決まっている。
『彼女たちはいつまでも幸せに暮らしました。
めでたしめでたし──』
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🧸ソル・アルレッキーノ(cv.あんに。)
🎀ルナ・アルレッキーノ(cv.あかりん)
✒️アンネ・クリストファー(cv.中条瑠乃)
📓アビゲイル・ヘルキャット(cv.憂沢時雨)
🕛ソフィア・クラーク(cv.はいねこ)
🗡ジャンヌ・フォーサイス(cv.なぎ)
💍アリソン・フローレス(cv.香流 紫月)
🗝ヴィオレット・ホワイト(cv.朔)
🌸プリムラ・ホワイト(cv.さき)
💍🗡I thought I was strange, that I don't belong
(私は邪魔者で、ここに居るべきではないと思った)
So I sucked it up and moved on
(だから我慢しながら呑み込んで、立ち去った)
🕛📓But I'm not convinced
(でも本当は納得いかないんだ)
Deep inside I don’t think I'm wrong
(心の底では自分が間違っていると思えないから)
🧸When moments like 🎀that creep upon
(そんな嫌な思いが忍び寄る時には)
🧸🎀Look down
(足元を見てご覧)
All:Every step you took toughened the world
(君が地面を踏み歩いて来た道は世界を固めた)
🌸Lu, la-la, li-la
Let the magic take control
(魔法に任せましょう)
Li-la, lu-la
It's there wherever you go
(どこに行ってもすぐそばにいるから)
All:Light after fireworks
(花火を打ち上げよう)
To the ocean, it goes
(その花火は海に沈み)
Reaching you through the rivers
(川にのって君のところまで届くよ)
🧸🎀And I'll stay yours
(そして私はいつも君と共にある)
🗡💍No matter sunrise might fall
(暁の頃にも 黄昏の頃にも)
📓🕛Although I may be flawed
(不完全な私だけど)
✒️🗝We'll walk together
(私たちは共に歩もう)
✒️🗝(Hello flowerworks, Hello flowerworks)
All:A flower for you, a flower for me
(花を君に、花を私に)
☽・:*☽・:*☽・:*☽・:*☽・:*☽・:*☽・:*☽
☪︎第1章 プレイリスト☪︎
①→https://nana-music.com/playlists/3770346
②→https://nana-music.com/playlists/3840176
☪︎素敵なイラストをありがとうございました☪︎
蓬様(https://nana-music.com/users/6551018)
☪︎素敵な伴奏ありがとうございました☪︎
星桜様
https://nana-music.com/sounds/06058b20
☪︎ 𝕋𝕒𝕘 ☪︎
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