大事な取引先様…?
nazna
大事な取引先様…?
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「んだば、よろしくだす」
ホビットと同じ低身長の種族。豊かな髪をツインに結んだ姿はまるで幼児のようだが…とんでもない。よろしくと頭を下げるドワーフの若い女性にジーグは苦笑い。この先数日を思うと気が重い。
話は数日前の事になる。武器屋の仕事に精を出しすぎたせいか、素材のストックが心許なくなってしまった。営業にかまけても店は回らない。ジーグはササッと荷物をまとめ、早速いつもお世話になっている鉱山のドワーフに会いに向かった。取引先や採取場は何ヶ所かあるのだが、彼との取引がジーグの中で一番大きい。常に安定した鉱物量を保持し、長い付き合い故にジーグの好みや意向をよく知っている。まず素材を揃えるならば真っ先に彼の元から訪れるのが決まりのようになっていた。
「んやぁ…ジーグでねぇか!最近全然顔出さねぇからさ、そろそろ来んべかって思ってたぞぅ」
流石は最大の取引先だ。もう既にジーグ様に鉱物を集めて待っていたようだ。話が早い…ジーグはニヤリと笑うと、ドワーフの隣に座り、鉄鉱石を初めとした様々な鉱物をガラガラ音を立てて物色し始めた。
「いいねぇ、いつ来ても質が約束された鉱山主と知り合いなのは、武器屋には大きな強みだよな…。よし、この山と、そこの宝石、あと石炭も貰ってくぜ」
そしていつも通り金を差し出すが、鉱夫のドワーフは手を出さずに後ろを振り向いた。
「はいはいはいはい!お客様、これからはおらが鉱物の売買を担当するでな、顔覚えてけろ」
にぱっと笑う顔が鉱夫の後ろから現れたかと思うと、即座に金を数え始めた。
「…親父、誰だ?」
「孫娘だぁ、可愛いだんろ?もうオレは鉱夫の仕事に専念するつもりだべ、これからは孫娘に頼むべな…んだがなぁ…」
鉱夫は少し顔をくもらせる。
「まだ大人になったばかりで、まーだまだ半人前だ…そこで相談なんだがねぇ、旦那…」
「じぃさま!この人がおらの『ほーむすてい』先のジーグさんだべ!?おら楽しみだぁ!」
ジーグは豆鉄砲食らったかのような顔をしている。ホームステイ先とはなんの事だ?
「鉱山と鉱物の事はオレたちがしっかり教えてきたが、外の街やら鉱物を買う客達のことはまだまだ勉強中…つー事で、どの客より信用してるジーグにしばらく面倒見て貰えねぇかなって相談だ」
「は!?ふざけるな!勝手に話を進められても…!!」
「勿論ただとは言わねぇ…おめぇさんがずっと欲しがってた孔雀のマラカイト…あの石をタダでやろう…悪くねぇ話だべ??」
先程も言った通り、この鉱夫とは長い付き合い。ジーグの好みや意向等手の内なのだ。
「んはぁー!街の武器屋!!始めて見ただ!武器、これから作んだべ!?絶対見ねぇと!」
店に着いた途端に鼻息荒い孫娘…。この厄介の対価を小脇に抱えながら、欲に負けた自分に小さなため息をついた。
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鉱夫の孫娘と数日過ごしてください。
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