そこに居るのは
feerie
そこに居るのは
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鈍い音を立て扉が開く。
「ごめんなさい。あと一人、見つけられなかった。」
蝋燭に照らされた薄暗い部屋に入り、女は机に向かう背中に声をかける。
机に向かう人物は、女の声を聞くと手を止め、そっと振り返った。
「あぁ、大丈夫。それより、皆の様子はどうだった??」
「ふふ。とても楽しそうに歌ってたわ。」
貴方にも聴かせてあげたい、と女は部屋に備え付けられているベッドへと腰掛け、微笑んだ。
その笑顔はどこか愁いを帯びている。
「いいんだ。僕は、此処で母さんの夢を叶えて、沢山の人に彼女たちの物語を届けたい。此処とは違う、幸せで温かな物語を。この手が動く限り、ケホケホッッ!!」
「‥ℳ!」
ケホケホと咳き込むℳと呼ばれた男に女が慌てて駆け寄り、男の背中を優しく撫でてやると、ℳはありがとう、と優しく微笑んだ。
「ℳ。少し外に出ましょ。今日の月は満月できっと綺麗よ。」
「満月か。あの子達も、満月を見てるかな。」
「ええ。きっと見てるわ。」
女─𝓘は、自身の首元で揺れる鍵を握り締め
ゆらゆらと揺らぐ蝋燭の火に、ふぅと息を吹きかけ男と共に部屋をあとにする。
扉を開けて見えた満月は神々しくキラキラと煌めいている。
二人は微笑み合い、何処か遠くから聴こえる歌声に耳を澄ませるのだった。
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02.
https://nana-music.com/sounds/0653e74f
03.
https://nana-music.com/sounds/0659d8b5
#feerie
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