冬ノ幕一巡目 壱
まほろば食堂不知火道本店
冬ノ幕一巡目 壱
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まほろば食堂冬ノ幕一巡目
-冬来リナバ春遠カラジ-
壱
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大正孤月横丁の南側の鳥居をくぐり、等間隔で並ぶ提灯を辿って北へ歩くと、左手に豪華な洋館が見える。
3階建のそれは、知る人ぞ知る「おぼろ歌劇団」専用の劇場だ。
今日も公演があるらしく、門の前は屋台と人で賑わっていた。
私はそれらに気を取られつつも、劇場に背を向け右手に進んだ。
時刻はちょうど正午を回った頃。
私が進もうとする道は険しい上に薄暗く、頼り甲斐のない赤い光がぽつぽつと差しているだけである。
光に近づいてよくみてみると、それは提灯蜘蛛だった。
ということは、この道が「不知火道」で間違いない。
道なりに進むと目的地に辿り着けると確信した。
やがて、私が向かっている方角から、甘味のある出汁の香りがするようになった。空腹を感じていた私は、無意識に足を速めており、少しだけ息が切れている。
横丁を外から眺めた時には気づかなかったが、参丁目は思ったより傾斜が急なようだ。
不知火道は峠ともいえそうな道だと、私は今更ながら学んだ。
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読み手/
夕凪ユキ
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あおむしゃ
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Arisa
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おとわび様「古都に咲く花」をお借りしております。
素敵なBGMをありがとうございます。
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