第26話「太陽のバステト」/SUN(星野源)
プリンセス・アテナ
第26話「太陽のバステト」/SUN(星野源)
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第26話「太陽のバステト」
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グランツ城の城下町。
その中心街にほど近い市場ではたくさんの商店が軒を連ね、新鮮な野菜や果物、魚や肉などの日常的な食べ物から、食器や雑貨などの日用品、衣類、薬草や武器など数多の物が売られている。
そんな市場のメインストリートを、両手に大きな袋を抱えて歩く少女がひとり。
ゆるっとした白いティーシャツに麻のパンツ、肩から革のバッグをかけて大きな麦わら帽子をかぶっているその姿は、まるでアイドルや冒険者には見えない。
けれどこの少女こそがNORNのメンバーであり、リーダーのヴェルダンディに最も近いところにいるとされている「太陽のバステト」だ。
バステトは市場の店主と会話をしたり、時に値切ったりしながら手際よく必要な物を買い集めていく。
ひとしきり買い物を終えたところで、バステトは郊外の広場まで歩いてくると木陰に腰を下ろす。
ふう、と一息つきながら麦わら帽子を脱ぐと、大きな白い猫耳がぴょこんと飛び出してきた。
さきほど果物店でサービスだと言われ受け取ったオレンジ色の果物を袋から出し、手で皮をむいて小房に分かれている果肉を口に放り込む。
猫耳がパタパタ動いているところを見ると、どうやら美味しかったのだろう。
すぐに食べ終えてしまうと、休憩とばかりにゴロンと芝の上に寝転がった。
☀「いい天気だ、にゃ」
しばらくのんびりと風を感じていたバステトだったが、足元に人影が現れたことに気付きおもむろに体を起こす。
そこに立っていたのは、小綺麗な鎧を身に着けた騎士のようないでたちの男だった。
バステトが視線を向けると、男は喋りだす。
「お休みのところ失礼するよ。
私は王宮騎士団、第三分隊に所属する弓術騎士なんだが、先程この近くで若い女性が強盗に遭うという事件が発生したんだ。
まだ犯人が見つかっておらず、危険なので早く家に帰りなさい」
理解した、という表情を見せ、バステトは立ち上がると荷物を抱えて広場を立ち去ろうとする。
そこに、騎士だと名乗る男はさらにこう続けた。
「ああ、東側の路地は今規制されているから、西側の大通りから出るといい。
人通りも多いから安心だろう」
☀「ええ、分かった。ありがとう、騎士さん」
言われた通り、バステトは広場の西に続く大通りを城外へ出る門へと向かって歩き始める。
しばらく進むと、肩から斜めにかけている革のバッグが一瞬、何かに引っかかったような感覚をおぼえた。
バステトはすぐに気付く。
今まさに、自分のバッグから財布を抜きだそうとしている者がいることに。
これは全くスリを庇うわけではないのだが、決してこのスリの手際が悪かったわけではない。
ただただ、狙った相手が悪かったのだ。
財布が抜き取られそうになったその刹那、バステトは一切の予備動作なく、常人の目には留まらぬ速さでスリの足首を蹴り飛ばした。
何事もなかったようにバステトはその場を去り、そこには突然倒れ痛みにわめいている男が残される。
足首が絶対曲がってはいけない方向にぐにゃりと曲がってしまったその男は、まさに先ほど広場でバステトに声をかけた騎士だと名乗る男であった。
城門を抜けたバステトは、人目につかないよう街道をはずれ南へと進んでいく。
☀「王宮騎士団はあんな安っちい装備は身に着けないし、そもそも第三分隊に弓術騎士はいないんだよね。
下手クソだなぁ、嘘つくならもっとマシな嘘にしなよって感じ」
辺りから人の気配が全くしなくなったところでバステトは足に魔力を込めて、周りの景色が追い付かないほどの速さで地面を滑るように駆け出した。
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『ーーー太陽のバステト。
NORNのメンバーの一人で、褐色の肌に白い毛並みをもつケットシー族。
しなやかな身体に高い身体能力を有し、洞察力も高いのでNORNの中ではヴェルダンディの右腕のような存在であるようだ。
灼熱や閃光の魔術が得意。
気が緩むと猫のような仕草や鳴き声が出てしまうらしい。』
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Lyric
☀Baby 壊れそうな夜が明けて
空は晴れたよう
Ready 頬には小川流れ
鳥は歌い
何か 楽しいことが起きるような
幻想が弾ける
君の声を聞かせて
雲をよけ世界照らすような
君の声を聞かせて
遠い所も 雨の中も
すべては思い通り Ah
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【ヴォーカル】
☀️太陽のバステト
さり
https://nana-music.com/users/5099208
【伴奏】
舩冨光曜様
https://nana-music.com/users/1640496
【テキスト】
あきなと。
https://nana-music.com/users/1150486
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