【体験談】かつて、そこにいた親友①
書き手:Rion
【体験談】かつて、そこにいた親友①
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今回も歌ではなく、素敵なBGMをお借りして、私の体験談を綴ろう思います。
これは、わたしが高校1年〜浪人していた2年間、そして大学生3年生までの間の話。
わたしは昔から現在に至るまで、人見知りで、人付き合いが苦手で。友達をつくるのが下手でさ。高1の4月も、わたし自身のいろんなコンプレックスやトラウマが原因で、人と話すことが怖くて…。
でも…ずっとずっと音楽を奏でることに憧れがあったわたしは勇気を振り絞って、吹奏楽部に入部する事に決めたの。人と関わらなきゃいけない部活だけど…せっかくの高校生活だ。ちょっとは自分を変えてみようって思ったんだ。
そこで、R君に出会った。
彼はチューバという金管楽器を吹いていて、とても上手だった。でも、いつもフラフラとしていて気づけば姿を消しているような、謎の行動をとる人で。かといって、存在感がないということではなくて。むしろ180cm以上の高身長で、どちらかと言えばイケメンの部類だった彼は、遠くからでもよく目立った。
わたしはホルンという金管楽器を選んだ。なので、同じ金管楽器同士ということで、自然とR君と一緒に練習することが多くなった。
それからというもの、R君はやたらとわたしを気にかけてくれるようになってさ。練習の合間にぼーっとしてるわたしに声をかけてくれたり、孤独感で押し潰されそうな時に「心や人生ってなんだろう」って語り合ったり、昼休みの教室でひとり黙々とお弁当を食べるわたしのところに、違う教室なのに来てくれるようになったり。
そうして…高校生活の3年間、その後の2年間の音大浪人。
長い時間色んなことを話して来たわたしたちは、気づけばお互いになんでも話せる存在になっていた。
もちろんダメなことだけど、まだ19歳だったわたしたちはその場の悪ノリで一緒にワインをがぶがぶ飲んでさ。ペース配分なんて言葉は辞書に無かったわたしは一気にダウンして倒れ、R君のご家族に看病してもらったこともあったっけ笑
地方の田舎に住んでいたわたしにとって、浪人中の孤独感は強烈なものでさ。なにせ近くの駅まで行くのに車で40分はかかる。家の周りには山や川しかない。とてもとても、閉鎖的な環境だったんだ。
家の中にも、居場所がなくてね。
音大浪人だったわたしはホルンの練習をしたりピアノのレッスンに通っていたのだけど、父からよく「お前、なんで上手くならないの?」って毎日言われて。心に余裕がなく、精神的に参ってしまっていたわたしは音楽以外のことが出来なくて。そんなわたしは父から「お前は金がかかるだけで邪魔だ、早く働け、そして早く出ていけ」と毎日毎日言われ続けてしまって。
だから、心を病んでしまった。
いつの間にか、人格障害になっていた。
幻聴を聴いたり、夢の世界を現実だと思い込むようになったりもした。
それでもわたしには、まだ救いがあって。高校の時の恩師が、授業終了後の空き教室を使っていいから、そこで練習しなよって。その代わり、時々OGとして、後輩達の面倒を見てあげてくれたら嬉しいって言ってくれて…だからわたしは、出来るだけ高校に行くようにした。家から出る時間がいつも待ち遠しかった。なので2年間の浪人生活も、ほぼ高校で過ごした。明くる日も明くる日も、高校に通い続けた。その2年間は、家で過ごした記憶がほとんど無いくらい。わたしの心に残っている当時の思い出は、後輩たち、そしてR君と過した時間ばっかりだ。
わたしの居場所は、高校を卒業しても高校の中だった。
わたしの刻だけが、止まってしまったような気がした。
でも…当時の私には、高校が唯一の救いだったな。
それから、わたしはOGとして後輩の指導もしながら、高校の空き教室で自分自身の練習にも励むようになったの。
そして近所の大学に進学していたR君は、やっぱりお節介な人で。そんなわたしの元にしょっちゅう現れては、わたしの練習の様子をよく見てくれた。練習の合間に心の苦しさを聞いてもらったり、帰り道で家の中に居場所がないことを相談したり。
そうしてようやく、わたしは音大に合格した。
たぶんR君と一緒に喜んだはずなのに、当時の私の感情は何だかめちゃくちゃで。当時の事をあまり覚えていないや。
進学後は高校の吹奏楽部の演奏指導員というアルバイトをR君と2人でして、やっぱり一緒に過ごすことが多かった。その活動スタイルは、わたしが大学3年生になるまで続いたの。
R君はわたしが音大で出演するコンサートにもよく来てくれたし、お互いに忙しくても時間を見つけて会っては、相変わらずいろんな悩みや、たわいのないことを話した。
かつてわたしには、そんな親友がいたんだ。
(つづく)
BGM/haruki:心
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