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音源をお借りしたよ
小説の文章だよ
音さんの音読がよかったので、真似してみたよ
自分が二十歳だった頃を振り返ってみると、思い出せるのは、僕がどこまでもひとりぼっちで孤独だったということだけだ。僕には身体や心を温めてくれる恋人もいなかったし、心を割って話せる友だちもいなかった。日々何をすればいいのかもわからず、 思い描ける将来のビジョンもなかった。だいたいにおいて自分の内に深く閉じこもっていた。一週間ほとんど誰ともしゃべらないこともあった。そういう生活が一年ばかり続いた。長い一年間だった。その時期が厳しい冬となって、僕という人間の内側に貴重な年輪を残してくれたのかどうか、そこまでは自分でもよくわからないけれど。
その当時、僕もやはり毎晩、丸い船窓から氷の月を見ていたような気がする。 厚さ二十センチの、硬く凍りついた透明な月を。でも僕の隣には誰もいなかった。その月の美しさや冷ややかさを、誰かと共有することもできないまま、僕は一人きりでそれを見ていた。
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1commnets
- こじめつ青チャ〜〜ありがとう!!魂レベルで好きな文章だから嬉しい( ◜ᴗ◝)