第3話 好きの気持ちは止められない!
BRAVISSIMO
第3話 好きの気持ちは止められない!
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第3話
好きの気持ちは止められない! ─マチネ─
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「もう!最っ高!でした!!!!」
広道町から30分ほど電車に乗って行くことができる西末市。閑静な広道町と違い、大型ショッピングモールや映画館や劇場などの複合施設が立ち並ぶいわゆる「都会」の街だ。
その大きな駅前で舞歌は興奮した様子で頬を真っ赤にして叫んでいる。道行く人が何人か何事かと不思議そうに振り返った。
「本物のミュージカルってすごい!役者さんの生の声で体がもうビリビリーって!胸もドキドキしちゃって!感動だよ~!!!」
「ちょ……鳳さん、声が大きいわよ」
「あははは!喜んでくれて良かった!」
そんな舞歌のそばに立っているのは慌てて注意するひめると、嬉しそうに笑う唯だった。
「はぁ……!すっごく素敵だったのに!皆で見られなかったのが残念……!」
「お姉ちゃんは仕事が入ってたし、井手奈さんには断られちゃったからね~」
「井手奈先輩、あんまり学校にも来てくれないしこの機会に仲良くなりたかったのになぁ」
「何でも近々アマチュア作曲家のコンクールがあるとかで、井手奈先輩は今すごく忙しいらしいですよ……ところで、私たち2人分とはいえタダで招待して頂いて本当に大丈夫だったんでしょうか?」
残念そうに肩を落とす舞歌に声をかけていたひめるが、不安そうに唯に顔を向ける。
「大丈夫、大丈夫!お姉ちゃんの昔のツテでたまに招待券が届くんだけど、お姉ちゃんは忙しいからなかなか行けなくて。むしろ招待券を無駄にするの申し訳なかったから2人が来てくれて有難いくらいだよ!」
「あっ、そうか歩夢さんは昔ミュージカルの子役だったんですもんね!すごいなぁ!」
「そうそう!お姉ちゃんの舞台とか見にいってたから私もミュージカルが好きになったんだ」
「へぇ~!唯さんはミュージカルには出てなかったんですか?」
「たしかに唯さんも歩夢さんとまた違ったタイプの美人ですもんね」
その言葉に唯はへにゃりと眉を下げる。
「いや~……私は向いてないよ」
「えーっ?そうかなぁ?」
「私もそう思います。明るくてリーダーシップもありますし。いつも私たちのことをまとめて下さってありがとうございます」
「……えへへ、照れちゃうなぁ!さ、そんなことよりせっかく西末市に来たんだからやることがあるでしょ!」
唯は悪戯っぽくにやりと笑うと舞歌とひめるの手を引いて走り出す。
「西末市は劇場だけじゃなくて、映画館もお洒落なカフェもいっぱいあるよ!私の大学はこの近くで詳しいんだ!さぁ~今日は遊ぶよ~!」
「えっ!?でも私お小遣いそんなに……!」
「わ、私もそんなに手持ちが……」
「ふふ~ん!この前バイト代入ったばっかりだからお姉さんにまっかせなさーい!」
♪♪
「うーん、イマイチ再生数のびないな……」
動画サイトを開いていた凛はため息をついてパソコンの電源を落とした。そして、机の上に置いてあった楽譜をゴミ箱に投げ入れる。
「コンクールまであと数ヶ月しかない。それまでに何とかしないといけないけど、僕の音楽には何が足りないんだろう……」
その呟きは薄暗い部屋で誰に聞かれることもなく消えていった。
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