目抜き通り
カフェ・プティフール♂♀
目抜き通り
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♂当店の代理オーナーも務める老人。にこやかに皆を見守る優しいおじいさん。コーヒーの淹れ方にはこだわりがあり、客のみならず従業員たちからも評判がいい。
♀老人にくっついている謎の少女。みんなに可愛がられていて、とことん甘やかされている。思ったよりもリアリストで、メルヘンをしっかりフィクションだと認識している。
『はっはっは、良い顔つきにございます。こちら、エスプレッソとベリーのムースとなります』
『ほんじつのコースは、これでおしまいです。おそまつさまでした』
端の方で遊んでいた少女が危なっかしい手つきで、テーブルの上にカップと小皿を置く。後ろでそれを見守っていた壮年の男性は、ホッとした様子で口を開いた。発表会のように恭しく頭を深く下げた少女は、端の方に戻らず男性と手を繋いで奥へと戻っていく。祖父と孫と言うにはあまりにも見た目が違いすぎるその2人はちぐはぐだが、てんでバラバラという感じはしなかった。
小さなカップを手に取り、深く息を吸う。芳醇な豆の匂い、まろやかに混じるアロマ、深くて落ち着く香りで満たされる。1口含めばその香りは一気に広がり、どっしりとした苦味がそれまでのコースを一気にまとめあげる。思わず顔をしかめるほどの濃さに耐えかねて、ベリーのムースをすくって口に運んだ。柔らかい甘みとベリーの酸っぱさは、エスプレッソとの相性バツグンでじわじわと快い苦味は中和されていく。コースの終幕まで実に楽しませてくれるいい店だ。こんな穴場を知れた俺は幸せだ。洋食屋『さかもと』、次に訪れる時には潤沢な金銭を持ってくるとしよう。すぐにたんまりと巻き上げられる。いつだってそうだったのだから。そんな些細な事は後で考えればいい。今は最後の一滴まで、この食事を楽しもうじゃないか。
#洋食屋さかもと
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