_1.クリスマス_
【Corrupted hymn :Ⅱ -Recurrence-】
_1.クリスマス_
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𝐈𝐧𝐭𝐫𝐨𝐝𝐮𝐜𝐭𝐢𝐨𝐧 𝐨𝐟 𝐭𝐡𝐞 𝐂𝐡𝐫𝐢𝐬𝐭𝐦𝐚𝐬 𝐩𝐚𝐫𝐭𝐲.
ナイトレイブンカレッジに入学して
『合唱祭』の存在を初めて知り
そして、その始まりとなる
"クリスマスパーティ"を訪れた
とある生徒の話。
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▶︎𝐒𝐓𝐎𝐑𝐘
1.クリスマス
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──この学園には毎年『合唱祭』という一年を通したイベントがあるらしい。
入学早々、学園長直々の説明が各クラスへとなされた。
合唱祭といっても全生徒が参加するわけではなく。
歌と魔力に優れた生徒が数名だけ、各寮から選ばれ、1年間を通じてグレートセブンに歌を捧げるそうだ。
自分を含めた生徒達はほとんどが「めんどくさそう」「興味ない」と口を揃えた。だって、魔法士を育成する学校で、歌を一年間も歌わなきゃいけないなんて。ねえ。
しかしメンバーは、既にほとんど上級生から選ばれていた。そりゃあそうだ、魔力にも優れていないといけないんだから。安心だ。
それでも一年生から何人かが選ばれていて、コイツってそんなに凄いやつなんだ?ふーん。なんて、その緊張したような横顔をチラリと眺めて、また興味がすぐに無くなってしまった。
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「今年はクリスマスパーティを実施します!!」
魔法で拡声された学園長の高らかな声が、教室に響き渡る。
クリスマスパーティ……といっても当日に開催されるのではなく、帰省直前に実施されるようだった。
今年度の合唱祭の始まりを告げるイベントとして開催されるのだと説明があったが、自分を含めた一年生たちは、『合唱祭』には微塵も興味がなく。飾り付けが面倒だなとか、どんなご馳走がでるんだろうか、帰ったら何をするかなどといった話で盛り上がっていた。
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授業の合間に飾りの作成や飾り付けを命じられたりしつつも、悪魔のように襲いくる恐ろしい期末試験の数々を乗り越え……もとい、命辛々なんとか切り抜けて、残すはホリデーを迎えるのみ。そんな安息の冬の日が訪れた。
そして──
クリスマスパーティ当日。
一年、二年生を中心とした生徒達が前日までに、ライトやモールなどで煌びやかに装飾した食堂には、見たことないほどの豪華な食事が所狭しと並べられていた。
友人達と共に大興奮で席につくとどこからともなく現れた学園長が、パーティの開催を告げる。
「皆さん!期末試験の合間を縫いながらのクリスマスパーティの準備、大変お疲れ様でした!本日は大いに楽しんでくださいね!
──では、乾杯!!」
挨拶もそこそこにパーティが始まった。途端に、食堂全体がザワザワとひどく賑わいだす。
(美味しい!あれも、これも。さすがはナイトレイブンカレッジだ)
周りのうるささなど気にも留めずに、あまりにも美味しい食事に感動し一心不乱に口を動かしつつ、同じく勢いよく食べ物を口に運びながらも器用にもお喋りを続けている友人たちの声に耳を傾ける。
「なあ。今日は讃美歌でも聞かせられるのか?」
「あ、忘れてたわ。これって合唱祭開始のイベントなんだっけ?この飯だけで十分だよなあ」
「食べ終わったら、はやく戻ってホリデーの準備がしたいぜ」
そんなやる気のない声が目の前でも、あちこちでも聞こえていた。
ある程度腹が満たされてようやくあたりを眺めると、じぶんたちとは違った様子の上級生に気づく。
どこか興奮したような様子でちらちらとステージに視線をやる先輩たちに、自分のように気がついた一年生たちが、いったい何が始まるんだとステージ上に興味を示した頃。
会場の明かりが徐に落とされる。
不思議と、辺りには一瞬で静寂が訪れた。
長いような短いような間があり、パッと照らされたステージに注目すれば、そこには数名の生徒達が一列に立っている。
その錚々たる顔ぶれに、生徒達は息を呑んだ。
(寮長も副寮長もいる……
それに、他の寮の寮長と副寮長たち……!?
他のメンバーも、どこかで見たことある人たちばかりだ)
1番端に並んでいた背の低い二人が、少しの緊張の面持ちと共に前に出てきた。
……ああ。あの二人も見たことがある。
たしか、1-Aの、とても成績が優秀な生徒……だったはずだ。いつも先生に褒められていてなんとなくいけすかないと思ったこともあったな。あいつらが歌を歌うのか?全く想像もつかない……などと考えていると、どこからともなく曲が流れてきた。
二人の表情が変わる。
そして───
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「…………すごい」
ぽつりと漏れた声が、自分のものだと気づくのに暫くかかった。
一曲が終わる頃。ため息のようなものが聞こえてふと辺りを見渡すと、あれだけ騒いでいた周りの生徒たちの視線は真っ直ぐにステージに注がれていた。ある者は眼を見張り、ある者は呆けて口を開き、またある者は感動に頬を紅潮させ、合唱に聴き入っていたようだった。聞こえてきたのは、隣の生徒の感嘆のため息だった。
そうか、と。自分もステージに視線を戻す。
強い魔力の乗った歌は、こんなに人を惹きつけるのか。
まだ胸がドキドキとしている。言葉の一つ一つに心が動かされる。彼等の歌声にもまた、不思議な魅力を感じる。胸の奥にじんと、痛みのような疼きが走っていた。
あれが本当に、自分達と同じ一年生なのか。
まるで住む世界の違う、高尚な存在かのようにも思えた。
一曲を歌い終えた二人は一礼をすると静かに後ろへと下がり、ステージからはけていった。
いつの間にか他のメンバーも消えていて、空っぽになったステージへと入れ替わるようにして長身の二人が上がってくる。
(あ、あれは。3-Bの、かの有名な二人組──オクタヴィネルと、ディアソムニアの、寮長。)
作り物めいた、圧倒されるほどの美しい顔立ち。
対照的な、水面を思わせる白銀と、闇そのもののような漆黒の髪。
彼らが、
口を開き、息を吸った。
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歌を聞くのは嫌いじゃない。
お気に入りのポップな歌手の歌にも感動し、思わず口ずさむような事もあった。しかし、これは全然違う。耳に残るメロディや切ない歌詞といったものではない。
ずっと聞いていたら、そのまま魂が、その魅力に引き寄せられてしまうような。
──彼らはここにいる自分達と同じ、ナイトレイブンカレッジに通う、ただの生徒であるはずなのに
彼らの歌声によって、こんなにも聞く人の心を震わせる。
たかが入学したての一年生である自分にはキャパシティオーバーだったかもしれない。
吐息混じりで厳かに紡がれた曲にも関わらず。それほど凄まじい圧力を、魔力を、歌唱力を向けられた。
震えてしまった。深い水底に、共に引き摺り込まれるような感覚。こんなに鳥肌がたったのは初めてだ。
こんな歌が続くのか。
そう思い背筋が寒くなる。
しかし、次にステージにあがったメンバーは、パーティ会場に満ちる重たく厳かなムードを気にも留めない様子だった。
そのまま悠々とステージの中央に進み出た三人。
2-Cの生徒たち。
その顔も、よく知っているものだった。
(こんなにまじまじと見たのは初めてかもしれない。本当に人形みたいな顔立ちだ……ポムフィオーレを率いる2年の寮長。
隣にいるのは……あのディアソムニアをとり纏めている、優しい副寮長の人だ。そしてあの獣人は、……そういえばサバナクローの寮長たちといつも一緒にいるな)
見た目も雰囲気もバラバラな彼らだが、息の合った様子で視線を交わす。
重たい空気などものともしない様子の三人は、楽しげで明るい表情のまま、流れてきたメロディに合わせてリズムをとり始めて、口を開いた。
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目を見開き、真っ直ぐとステージに見入る。まるで、耳に入る彼らの歌声が、元気のもとであるかのように身体が軽い。
歌を聞くだけで気分が高揚し、自然と頬が綻ぶ。先ほどと打って変わってなんて楽しく愉快な気持ちなんだろうか。
彼らのことを深く知らないにも関わらず、個性的なメンバーに強く好感を持ってしまう。軽快なリズムと歌声を紡ぐキラキラとした彼らを、存在ごとずっとずっと追っていたいような。彼らが自分達を応援してくれるなら、自分も彼らを応援したい……
──と、そこで気がつく。
彼らが歌っている曲のその歌詞や曲調が、そのまま真っ直ぐに、自分達に届いているのだ。
心も。それに伴って、体も。
……そしてきっと、歌に魂までも動かされている。
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続く2-Aの二人組は、"怖い"と噂の目つきの悪いスカラビア寮長と……モストロラウンジにいくと会える、いつもニコニコとしたオクタヴィネルの副寮長だった。
全く毛色の違う二人がどんな歌を……と緊張しながら見ていると。二人の顔から、色が消えたかのように見えた。
まるで、仄暗い内側を曝け出すような、嘲るような。囁くように淡々とした歌声に、ひどく威圧されたかのように身が縮こまり、しかし彼らから目が離せなくなってしまう。
その後に上がってきた寮長達……ハーツラビュルの優しくカッコいいと評判の寮長と、お淑やかでまるで女の子のようなイグニハイドの寮長の二人が、口を開くと
冷えてこわばっていた背筋もろとも体がぽかぽかと温まるような、優しく、包み込むような歌声が辺りに満ちた。身を委ねたくなるような声の響きに、あちこちからため息が漏れる。
続く二人組は真面目と評判の2-Bの副寮長たちだ。サバナクローの犬の獣人と、イグニハイドの"なんでもできる"と評判の先輩。
流れてきたのは真面目な二人から想像がつかない、冬という季節に希望を抱くような、明るく期待に胸が膨らむ恋の歌だった。……恋ってこんな気持ちだっけ、そうか、と、何故かうわついた気分になってしまう。
いや、理由は分かっている。彼らの歌声に感化されてしまったんだ。
続いて、見知った三人組がステージに上がった。
入学してから何かと話題が尽きない、こちらも一年生の中では有名人だった。
一年生にして副寮長を指名された、女みたいな柔らかい雰囲気のやつ。いつも眠たそうであちこちで昼寝してるやつ。それと、いつも騒ぎばかり起こしてる問題児。変な組み合わせだが、同じクラスだからか一緒にいるのを見かける。
こんな三人が、前の人たちみたいな歌を?
信じられずにステージを見ていると、軽快な曲が流れてくる。
三人が入れ替わり立ち替わり口を開く。まるで話題の絶えない彼ら自身のような、曲の小気味良いテンポに乗っかるように、思わず体が揺れる。
……自分は、歌うことが好きというわけではないのに。彼らの歌を聞くと自分まで一緒に歌いたくなってくるのだ。
彼らの歌は、ありのままを認め、励まし、楽しもうと誘ってくるような歌だった。心がムズムズとする。ひどく楽しい気持ちになり思わず一緒に声を上げたくなるのをなんとか我慢していれば、最後のメンバーと思しき二人がステージに上がってきた。
3-Cの……あの二人も、きっと誰でも知っている。マジフト部の部長でありブレーン、誰もが憧れる虎の獣人のサバナクロー寮長。そして隣は、とても体の大きくとても麗しい、ポムフィオーレ副寮長を務めるサイエンス部の奇人だ。
有名な二人に注目して静まり返った空気へと
その静けさのまま、彼らのための伴奏が流れ出した。
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「はあ……ゾクゾクした〜〜〜!!かぁっこ良かったよな!!!」
「最後、すごかったな!あんなにラブソングに聴き入って感動までしちゃったの、俺初めてだよ……っていうかぶっちゃけさ、トキメいちゃったぜ」
「いや!わかる!ハモリもすんごい美しくてさ、あんなガタイいい二人が出せんのマジでビビるよな」
ワイワイと、興奮冷めやらぬ生徒達の声で賑わう帰り道。一年生から三年生まで入り混じって、各々が寮への扉へ進んでいた。
ふと隣から気になる声が聞こえた。
「でも、こんなにすごい魔力を放出して、ブロットは溜まらないんですか?」
(……!確かに。)
「全然溜まらないんだって。歌った奴等の魔法石もまっさらなままだし……」
「俺それ知ってるわ。直接魔法を行使してるわけじゃないからだって去年学園長が言ってたぜ」
隣から上級生と思われる男がひょっこりと顔を出す。
「それってチートじゃないですか?魔法使いたい放題じゃん」
「それがさ、そうでもないんだよ。そもそも歌に強い魔力を乗せるってすげー難しいみたいでさ。それにたとえ何かの目的があって歌ったとしても、魔法みたいにパッとものを動かせないじゃん?人を感動させたって、直接人を操ったりできるわけじゃねーしさ。いくらブロットが貯まらないって言っても、魔法と全然違うもんだから使い所もないって」
「でもそれって、グレートセブンたちが出来てたことなんだろ?それができちまうってことだよな?」
「そうなんだよ!」
騒ぐ上級生を見ながら、なるほどなあ、と頷いた生徒とともに納得して意識をもどした。
今日の合唱を思い出す。
(……例え操られることがないとしても、歌であんなに心を動かされるんだから、やっぱりスゴイんだ。あのグレートセブンがやっていたことを、彼らもやっているんだ)
彼らの姿が、歌声が、不思議と鮮明に浮かび上がった。全員が歌い終え、パーティの終わりを告げるように鳴った美しい鈴の音までも、一際綺麗に耳に残っている。
今年の『合唱祭』は、課題形式なのだそうだ。詳しいことは忘れてしまった。……真面目に学園長の説明を聞いておけばよかったな。
──果たして彼らは、1年間の『合唱祭』を経て、どのような『Corrupted hymn』を完成させるのか。
きっと自分なんかじゃ、想像もつかないだろう。
こうしてこの学園での楽しみが、ひとつ増えたのだった。
ウィンターホリデーが明けたら、合唱祭メンバーである一年生の奴らに話しかけてみてもいいかもしれない。
……そういえば学園長、年が明けたら何かあるって言ってたな。
なんだっけ。
Next story... 『第一章』
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