ばけものぐるい
ユリイ・カノン
ばけものぐるい
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そう 狂った九夏の怪談
逢魔が時 ひぐらしが告ぐ
飼い馴らした傀儡が選ぶその目は誰?
「まあちゃんちゃらおかしな口承」
災禍の凶兆をご覧よ
夥しい蝶の死骸が参道に散らばっていた
掻い潜った市街の喧騒 境内から響いた嚮導
灯籠 石畳の階段 踏み入る少女
「もういいかい」「もういいかい」と問うが
鬼の声は聞こえず
静寂裂く鐘の音さえも届かない
「嗚呼、かしこみ かしこみ…」
手弱女の聲と火の音が籟籟と
「懸けまくも畏き大御神」
今 夜宴が始まる
さあ華やいだ怪奇の世に
喰らって奪って掻き攪せ
ようこそ
ここは泥犂の街 狂い啼け化け物よ
さあ散れ災禍 百鬼の群れ
蛙鳴蝉噪を蹴散らして
拝する愚民 眼を伏せて
心臓を抉り出した
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