六章・吉原ラメント
呪具『椿禿』
六章・吉原ラメント
- 42
- 11
- 0
呪具『椿禿(ツバキカムロ)』
日本風の愛らしい禿(かむろ、花街で働く稚児のこと)姿の人形。
花街に通っていた男の家で発見されることが多く、髪や服を整えてやると少しずつ背が伸びてゆく。着物が豪華になってゆく。頬や唇に椿のような紅が差される。髪が伸びて結い上げられる。ここまで、誰も気づかない。カランコロンと音がするまでは。
美しく成長した人形は、花魁の姿になっていた。豪奢な着物の裾を禿も連れずに一人で引き摺り、その美しい脚はこびをしゃなりしゃなりと男の方へ向けるのだ。
カランコロン、高下駄が鳴る。しゃんしゃらり、簪が揺れる。男の目の前まで来てゆるりと頭を回し、下駄を脱ぎ、正座をして、三つ指をつき、そして。
ごろり。
頭が落ちた。椿の散るように、美しいかんばせを床に擦り付けて落ちた。男はその首を拾ってやることができなかった。なぜって、男もまた床に落ちていたから。正確には男の頸が、椿のように真っ赤な飛沫を散らして落ちたのだった。
男の視界に最後に映ったのは、昔小指をよこした遊女によく似た満足げな人形の顔だったとか、そうでないとか。
-歌詞-
江戸の街は今日も深く
夜の帳カケテいく
鏡向いて紅を引いて
応じるまま受け入れるまま
橙色輝いた花
憧れてた望んでいた
いつの間にか藍色の花
けれど私安くないわ
真はただ一人の何方かのためだけに
咲いていたかったのだけれど
運命はわっちの自由を奪い、
そいで歯車を回していくのでありんす
偽りだらけの恋愛
そして私を抱くのね
悲しいくらいに感じたふりの
吉原 今日は雨
貴男様 どうか私を
買っていただけないでしょうか
咲き出す 傘の群れに
濡れる 私は 雨
歌:モブ
Comment
No Comments Yet.