陰る視界
nazna
陰る視界
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「アイム…どこ?……見えない…」
迂闊だった…。最近の平和な空気に完全に気が緩んでいたのかもしれない。キリエに辿り着く前に潜伏先にしていた集落があった。そこにうっかり荷物を忘れてしまった。…大した荷物ではない。普段だったら確実に見捨てていただろう。しかし、二人の衣服が入ったその荷物…いつもみすぼらしい皮のローブを黙って着ているソフィーが気がかりだった。
「ソフィーが売り物として誕生した時に合わせて作られた服もあるしな…仕方ない」
アイムは大分長く悩んだが、結局ソフィーを連れて荷物を取りに行った。そこに追っ手が居るとも知らず…。
「無我のその先まで、落ちよ、落ちよ!朝が訪れる事も知らず眠れ!!ヒュプノス!」
咄嗟に追っ手を眠らせていつもの様にソフィーの手を引いて走り出す。しかし、眠ったはずの追っ手は即座に立ち上がった。最早、アイムの存在は追っ手に知られ始めているようだ。魔具の変わり身の傀儡を懐から投げ捨てる。それでも防ぎきれなかったのか、相手は大分ふらついていたが二人に向け手を翳し何かを唱えている。
ソフィーはアイムに目をやるが、逃げる事に必死で相手が起き上がっている事に気づいていない。声をかけようとするが、魔力の流れが追っ手に集まっているのを感じた。きっと間に合わない。
ソフィーは白い指を追っ手に突き出すと、何かの陣を空に書き、ふっと息を吹き掛けた。すると陣から津波が現れ、追っ手をあっさりと飲み込んでしまった…。
「アイム…?宿?」
無事に荷物を持ち出して宿へと逃げ切れたが、魔法を使ってからソフィーの目は濁り、視界が悪くなっているようだ。フラフラ歩くソフィーをベッドへと運び、静かに休ませる。夜にはもう目は元に戻っていた。アイムは心から安堵したようだが、何だか頭が痛い…ソフィーは夕食に降りる事無く、そのまま眠りについた。
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頭痛を抱えながら見た夢を教えてください。
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