十九の春
THE BOOM
十九の春
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アルバム『OKINAWA ワタシノシマ』より。
当初は前々回の『沖縄に降る雪 (acostic) ラスト』の後にこのサウンドをアップする予定だったけど、前回の『島唄 2002』のアップ期日が迫っていた為に急遽、順番を交換したのであった。
このアルバムの最後から4曲は関連性がある。
『島唄 2002』 (白百合クラブと一緒に歌った)
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『十九の春』 (白百合クラブと『ナビィの恋』)
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『 沖縄に降る雪』 (『ナビィの恋』インスパイア)
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『墓標』 ( 『 沖縄に降る雪』の起源となる曲)
さらに、映画『白百合クラブ 東京へ行く』と『ナビィの恋』は同じ中江裕司監督で、『沖縄に降る雪』のMVの監督も務めてる。その『白百合クラブ 東京へ行く』の中で宮沢氏はこの楽曲を白百合クラブのステージで歌っていて、その表現が本アルバムに収められている。
そういう1999年頃から2002年にかけての宮沢氏と沖縄の“縁”と“機”が詰まっているのが後半4曲と私はみている。
私としては、せっかくの沖縄祭りなんだからとこのサウンドを歌旅にする案もあった。しかし、候補に挙がる場所がどれもしっくり来ない。というのも、この楽曲の舞台やルーツを探ると二転三転どころの話じゃなく、とにかく定まらないからである。
この『十九の春』が全国的に知れ渡るようになったのは1975年の田端義夫のカヴァーによって。その3年前の沖縄の本土復帰の年に、まずは沖縄内でヒットしてる。
その要因とされるのが1955年から75年までのベトナム戦争。レコード化に際して『十九の春』と名付けられる前は、 『ジュリグヮー(娼婦)小唄』とカテゴリー的に呼ばれ、基地のあるコザの米兵を相手に商売をしていた女性たちの間で流行っていたそうな。
そしてその当時のアメリカ占領下にあった沖縄の、「日本から切り捨てられ蹂躙されてしかもアメリカに売られてしまったが戦争景気で派手な暮らし、でもやっぱり募る本国への想い」という内情が、コザのジュリグヮーの想いと共鳴したことでの県内大ヒットだったとも言えるらしい。
しかし、太平洋戦争中にはこの楽曲のメロディーはすでにあった。石垣島の白保では悲恋歌としての『白保小唄』、奄美大島沖で米軍魚雷によって沈められた客船・嘉義丸への鎮魂歌である『 嘉義丸の歌』などは、この楽曲と同じメロディーである。
そのメロディのルーツを辿ると明治期の与論島で歌われた『与論ラッパ節』に行き着く。その楽曲をさらに辿ると、与論島出身の出稼ぎ労働者が北九州の炭鉱などで聴いた当時の全国的流行歌のヴァイオリン演歌の『ラッパ節』が原曲となるらしい。
さらにその『ラッパ節』にも原曲があり、西南戦争で活躍した抜刀隊を讃えて作られた『抜刀隊の歌』がそれになる。しかしまたその『抜刀隊の歌』を作ったフランス人軍楽隊教師はなんと、その楽曲をカルメンの『アルカラの竜騎兵』を参考にして作ったとのことである。スペインから沖縄までの、なんとも長い歌旅である。
(ここまで、複数の本やサイトを参考にまとめた。ゼェゼェハァハァ…)
そして話は最初に戻る。『ナビィの恋』で島のオペラ歌手が三線をバックにカルメンを歌うシーンがあるのだが、 『十九の春』をモチーフにして製作された映画だからこそそのルーツに敬意をもって入れられたんじゃないかぁと思ったりする。
さらにさらに、そんな中江監督と白保の白百合クラブの方々へのリスペクトとして、THE BOOMのアルバム『OKINAWA ワタシノシマ』のセットリストが作られたのだろうというのが私の読み。
『与論ラッパ節』以降は、悲惨な現実を陽気な曲調と軽快な言葉運びで歌っているものが多いが、そういう形式はまさに『艦砲ぬ喰ぇー残さー』も同じであり、その艦砲射撃を「読谷に吹き荒れた鉄の暴風」として歌い上げたのが『島唄』である。
ちなみに、宮沢氏は 『艦砲ぬ喰ぇー残さー』の歌碑建立準備コンサートで、『島唄』をビデオレターで贈っている。
沖縄県立芸術大学の音楽文化専攻の非常勤講師であり、250人以上の唄者の沖縄民謡をアーカイブ化した『唄方』を教育機関に寄贈した、いま沖縄民謡文化研究者としても認知されている宮沢氏ならばきっと、2002年の本アルバム製作時もそこまで考えただろうなぁと私は思っている。
そしていよいよ明日からラジオ沖縄にて、宮沢氏は『琉球ソングブック』という番組をスタートさせる。『時の首里彩画』以来2つ目の沖縄でレギュラー番組。しかも、今度はメインパーソナリティーの番組を持つとは。ウチナーンチュファンとして大変に喜ばしい。御本人がもっと喜ばしいだろうなぁ。
先日に、『ナビィの恋』に出演していた信ちゃんこと津波信一氏が『うちなーポップス50年史』というNHK沖縄の特番で、「(宮沢さんは)沖縄の人かと思ったら山梨の人だし。でも、いまや沖縄の人」と評していたのが実に感慨深く思う。
その『ナビィの恋』の外伝的作品としてサンラー視点の『沖縄に降る雪』があるけれど、エンディング曲の『RAFUTI』もまた面白奥深い。
一見して見た目華やか陽気で明るい雰囲気の映画のラストに、暗めのピアノと沖縄民謡の合ってるんだか合ってないんだかな曲が流れる。実はその『下千鳥』という民謡の悲哀歌そのものに意味があり、それを歌う登川誠仁が演じた恵達の心情が歌われている。その登川誠仁が書き下ろした部分の和訳が切ない。
「積もる思いは山ほどにあるが、他人には言えない。この胸だけに。一人、この胸に思って」
映画の中の恵達は、ラストのニービチシーンででも感情をほとんど表に出さない。もちろん登川誠仁の演技力によるところのものもあるが、最後の 『RAFUTI』までが映画の表現になっているとは恐れいった。それはまさしく「いまさら離縁というならば…」という恵達の無常観なわけだ。
ちなみに、私が『沖縄に降る雪』三部作を手掛けている時にちょうどタイミング良く、ハイサイさんが 『RAFUTI』のピアノをアップされていて。
https://nana-music.com/sounds/05f93e1f
なんという素敵な“縁”と“機”であることよと思い、この度、紹介させて頂きます。いつか歌えたらいいなぁ。
ハイサイさんの『RAFUTI』を添えまして、これにて宮沢氏と『ナビィの恋』にまつわる表現は完結である。いまの私の全力を投入できて、感無量です。
≪歌入れについて≫🎤
歌い方はやはり宮沢節参照にて。エフェクトは安定のarena0%。今回いつもと違うのは音量。モッサさんの音量が三線よりも2歩くらい後ろなので、それに合わせた。たまにはこういうのもいいね。納得。
素敵な伴奏にて一緒に歌わせて頂きましたモッサさん、ありがとうございます。
ソメイヨシノの舞う青空を連想させるサウンドですね~。この楽曲はやっぱ春はあけぼの的なぼのぼの感が良いですよね。私も半年くらい前に初めて、花見客に交じって三線を弾いてみましたよ。屋外で弾いてこその三線かなと思いました。
≪最後に≫🙅🌸🐦💤🙇
このサウンドを歌旅にしようかと考えてた時、当初は民謡ステージ歌姫で我如古より子さんと一緒に歌おう❗という企画を考えたけど、それはそれで楽曲と関係ないし~と思って断念。
次に『白百合クラブ 東京へ行く』を観たので、唐突に石垣に日帰りで行こうとしてた。空港から白保海岸まですぐだからね、半日で十分。あと、『ナビィの恋』のロケ島の粟国島、与論島も行こうと画策してたけど、どっか無理あるなぁと思い始めてきて断念。
それは反動から来てる歌旅衝動で、この楽曲の舞台といえば、沖縄の吉原・真栄原・辻がベストなんだけど、それらの地は流石に動画素材としては不謹慎かと思い断念したわけで。吉原・真栄原はもういまやひっそりしてるし。
かつて私は真栄原社交街跡地の真ん前に住んでいて、あの独特のしなびた街並みにかつての栄華と『十九の春』の面影をみたものだった。
でも、20年くらい前の真栄原とかだったら良い映像にはなったろうなぁ。あのピンクライト乱舞は名物であった。そして、実は、そのピンクライトのパイオニアの方が経営するライヴバーに私はよく行っていて、そこで同席した方からnanaを紹介してもらったのでした。
その有り難い“縁”と“機”の導きを表現で昇華することが出来て、あの日から今日までnana活をしてきて、本当に良かったなぁと思う。nana活5年目突入です。
※トップ画像は、私が三線を弾いた春の井の頭公園。
#THEBOOM #十九の春 #OKINAWAワタシノシマ #宮沢和史 #ナビィの恋 #白百合クラブ #中江裕司 #沖縄に恋した宮沢和史祭り
Comment
13commnets
- もっさ
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- もっさ
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- kanako
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- エリス羽衣なんだかもうTHE BOOMの研究者の論文を読んでいるような気持ちになってきました😊 ひとつの楽曲から深く深く深く探究し推論を積み上げていく手法はまさに研究者✨✨✨ その熱量に脱帽👏👏👏
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- ニヤ☆ゆっくり聴きnanaさせて下さい〜💦☆
- うか🐾城村優歌🐈週末コメントお休みし〼🙇♀️関連作品もあまりよくわかってなくて、勉強不足でいつも追いつけません。ニヤさんの知識量、熱量ほんと素晴らしいです✨✨✨ 時々来て反芻するのですが、きちんとした感想を述べるほどの知識が自分になくて🙇♀️ ただ圧倒されつつ拝聴🥰
- もっさナビィの恋で誠仁さんが歌ってた歌詞だー!(〃´ω`〃) コラボありがとうございます! 実は、先月ハイサイさんがナビィの恋の音源をアップされてたのもあって、メルカリでDVDを買って観たばかりです🌺 あちこちからオススメされていただけあって、素敵な映画でしたー この音源は桜の花びらが舞い落ちる公園のベンチで三線を弾きながら歌ったものです🌸 三線の目の前にスマホを置いて録音したので、声が遠くなりましたー その代わり、鳥の鳴き声がたくさん入ったのが嬉しくて、OKテイクにしたのをいま思い出しました🐦 歌が入ってない方の音源もあるんですが、そちらは公民館の会議室でひっそりと弾いてます 笑 で、たまたまなんですけど気まぐれに三線のアイコンに変えてるんですが、このアイコンの地面をよく見ると桜の花びらが散ってるんです🌸 風で工工四が飛ばされないようにするため、ホワイトボードとマグネットを外三線の時の基本装備にしてます。 なので、この音源を録音したときもちょうどこんな感じでした🌸 お父さんは外で歌うのがまだ少し恥ずかしい時で、寄ってくるギャラリーにものすごーく丁寧に対応してしまって、余計に人が集まって恥ずかしさが増す、という事態に陥っていました 笑 自分にとって大変思い出深い音源です(〃´ω`〃) ありがとうございましたー 満月の夕、男性キーと女性キーの伴奏に少しずつ参加させてもらっているところです😺 女性キーの伴奏をカナコッサにお願いしたところ、本当に美しいピアノを演奏してくださいました(〃´ω`〃) 世界観を壊さないよう、頑張ります🎶
- kanakoモッサさんとのデュエット、待ってましたー!! 私もとても憧れているモッサさんです✨✨ やっぱりいいっすねー!うた声もサウンドも。 私もちょうど、モッサさんリクエストの伴奏を投稿したばかりだから、素晴らしい“縁“と“機“だなあっと。(まだ、“縁“と“機“の使い方、慣れてないからちょっと使い方間違えてるかも💦) nana活動5年目突入もおめでとうございます㊗️ 無理なく楽しく続けられますよう✨