純潔パラドックス
💘愛欲の悪魔・シトリー
純潔パラドックス
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✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎💘愛欲の悪魔・シトリー Episode2✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎
※今回のお話には流血表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。
その夜もシトリーは夜空を飛んでいた。
もちろん行先は山の麓の小さな教会だ。マリーの顔を思い浮かべながら、シトリーは想いを巡らせる。
(さて、今日は何を対価にしようかしら?)
口付けを対価に求めるとマリーは酷く恥ずかしがり動揺する。なので、最近は詩集を一緒に読むことを対価にしていた。
しばらく大人しくしていた事が幸いしてマリーの警戒心もかなり薄れたようだし、今夜は情熱的な恋の詩でも読ませてからかってみようか。きっとまた顔を真っ赤にして……
そこでシトリーはある事に気付いた。
「……炎?」
翼をふるわせて速度を上げると、眼下に炎と悲惨な光景が見えてくる。領主お抱えの兵士たちが教会の人々や信者達を追い回している。信者達は逃げ惑っているが、ちゃっかりした者は火事場泥棒を働いていようだ。教会の銀の燭台を持って走り去る者もいる。
(領主が泉を独り占めしたくなった……って所かしら?いつの時代も貴族は身勝手で愚かね)
シトリーは不機嫌そうに眉をしかめると自分の羽を何枚か抜いて弓矢へ形を変え、戯れに何人かの頭を貫いて遊んだ。
「……さてと、マリーはどこかしら?」
✝
マリーは泉のそばに倒れていた。
兵士や信者の暴動から逃げ惑い、泉に辿り着いた所で力尽きたのだろう。手や足に無数の傷や打撲の跡が残っている。だが最も深いのは胸に刺さった短剣の傷だ。不用意に抜けばきっとマリーの命は永遠に失われてしまうだろう。
胸に抱きしめた天秤も、傍らの泉の水もマリーの血で赤黒く染まってしまっている。
シトリーはそっとマリーを抱き起こすと、口もとに耳を近づけ微かに呼吸をしているのを確認してほっと息をついた。
「マリー」
「あ、あ……なたは……ゲホッ……!」
「無理に話さないで。肺にも血が流れ込んでしまってるの。このままだと貴女は長くない……だから取り引きをしましょう」
本当はもっとゆっくり距離を縮めてから持ちかけたかった取り引きだけど、とシトリーは不満そうに呟きながら続ける。
「貴女の魂を私に頂戴。そして貴女の魂と私の魂を結び付ける……そうすれば貴女の魂をいったんこの世に繋ぎ止めてあげられる」
「魂を、む、すび……付ける……?」
マリーは微かに目を見開く。魂を結び付ける。つまりそれは片方が死ねば、もう片方も死ぬようになる契約……死を共にするという事だ。
契約を結ぶことでマリーはいったん死を免れることができるが、シトリーはマリーと運命を共にするリスクを背負うことになる。本来なら何らメリットのない取り引きだ。
「どうして……そこまで、して……?」
「あら……ふふふっ!そんなの決まってるわ」
シトリーは微笑むと、血に染まったマリーの唇に躊躇いなく口付けを落とす。
「そんなの……貴女を愛してるからよ」
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✞Lyric✞
朧夜に流れ落ちる 口遊(くちすさ)ぶ声は
空谷(くうこく)をかごやかに ゆらら舞い踊る
手を伸ばせば消えゆく 束の間の夢に
見えない愛を翳(かざ)して 独り微笑むの
虚ろな月影をなぞる しなやかなその指先に
すべて解かれ委ねてしまう
あぁ…燃ゆる秘め事──
無弦の琴-調べ- 迷宮-楽園-に誘(いざな)う
謌う程に美しく 絡み合う永却(とわ)の記憶
思いの露は 貴方を求めて
枯れることなく この暗海(そら)を染め上げ
輝き続けるでしょう
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💘「愛欲の悪魔」シトリー (cv.sumire)
鷲の羽を持つ、美しい容姿の悪魔。何故か貞淑なエプロンドレスに身を包んでいるが、服装と裏腹に淫らな言動でマリーを翻弄する。
多くの人を救いたいと悩むマリーの前にある日現れ、優しい心につけこむような契約を持ちかけては口付けなどの「純潔」を対価として要求する。彼女は遂にずっと待ち望んでいたものを手に入れようとしている──。
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✞Story List✞
https://nana-music.com/playlists/3605152
⬆これまでのマリーとシトリーの物語はこちらをご覧下さい
✞素敵な伴奏をありがとうございます✞
ねお様
https://nana-music.com/sounds/02fdac44
✞Tag✞
#純潔パラドックス #水樹奈々 #アニソン #アニメ #DTM伴奏 #伴奏
#悪魔シトリー
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