第4話 タクミの夢
少し伸びた前髪を気にしながら、いつもの国道で信号待ちをしていた。
朝8時は車の往来が激しく、初夏の蒸し暑さと車の排気ガスでムンムンとした空気が舞い上がる。
みんなどこかへ何かの目的のために車を走らせている。
それを傍観している自分に気づいたとき、また一つため息をつかざるを得なかった。
「よっ!おはよ!」
蒸し暑い空気を一掃するような声を聞いた瞬間、少しのやかましさと頬がほころんでいることに気づいた。
彼女はサオリ。
付き合ってはないけど、よく話す女子の友達。
肩まで伸びた真っ黒の髪を後ろで束ねて、口にゴムをくわえてる姿が好きだ。
おおっと。何を言ってるんだか。まあ、そういうことなんだろうな。きっと。
「あ、青だ!」
勢いよく飛び出したサオリを見て、僕の頬はまたほころんだ。
きっと、僕はサオリの背中を追いかけながら生きていくんだろう。
サオリは多分気づいてないだろうけど、僕の心を覆っている鱗は本当の僕じゃない。
どこに行けばいいのかわからない、僕は魚なんだ。
サオリ、僕をどこまでも連れていってくれないか。
サオリ、僕をどこまでも導いてくれないか。
サオリ、僕は君が好きだ。
その時、信号無視をしたトラックがサオリに突っ込んだ。
つづく
次回 サオリとの別れ
#鱗 #秦基博 #けんさくピアノ
Comment
1commnets
- 🌟 けんさく꙳☄︎🎧 🤍(伴奏メイン)伴奏使って頂きありがとうございます👏👏👏 素敵なサウンド嬉しいです。 また機会があればよろしくお願いします🤲🏻 🎹けんさく