夜に駆ける
🌺緋杓 楼(cv.りりか)
夜に駆ける
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Happy Birthday 🌺Rou !!
Birthday song:夜に駆ける
❁⃘*.゚─────❁⃘─────゚.*❁⃘
🌺緋杓 楼─シャロン
(cv りりか)
https://nana-music.com/users/6532634
沈むように溶けてゆくように
二人だけの空が広がる夜に
「さよなら」だけだった
その一言で全てが分かった
日が沈み出した空と君の姿
フェンス越しに重なっていた
初めて会った日から
僕の心の全てを奪った
どこか儚い空気を纏う君は
寂しい目をしてたんだ
いつだってチックタックと
鳴る世界で何度だってさ
触れる心無い言葉うるさい声に
涙が零れそうでも
ありきたりな喜びきっと二人なら見つけられる
騒がしい日々に笑えない君に
思い付く限り眩しい明日を
明けない夜に落ちてゆく前に
僕の手を掴んでほら
忘れてしまいたくて閉じ込めた日々も
抱きしめた温もりで溶かすから
怖くないよいつか日が昇るまで
二人でいよう
❁⃘*.゚─────❁⃘─────゚.*❁⃘
「楼ちゃん、お誕生日おめでとう!」
香澄を始めとしたクラスメイト達が、自分に向かって笑顔を向けている。差し出された沢山のプレゼントを、楼ははにかみながら受け取った。
「ありがとう。プレゼント、大切にするわ」
「夜にはこのお店に集合だからね!」
「分かってるわよ。楽しみにしてるわ」
そう言って、楼は明るく教室を出ていく。その様子を見送りながら、香澄達は互いに目を合わせて肩を竦めた。
「やっぱり、どこか浮かない感じだったよね」
「そりゃあ、王子様からは何の反応も無かったんだから。……ね?菫沢さん?」
香澄の隣にいた少女が、何故か教室の隅にあるロッカーに向かって、茶目っ気たっぷりに声をかける。すると、ロッカーの扉が軋みながら開き、中から礼美が姿を現した。
「や、やぁ、もう大丈夫なのかい?」
長いことロッカーに入っていたせいでほつれた髪の毛を元に戻しながら、礼美は恐る恐る口を開く。
「隠れる必要はなかったんじゃ……」
「サプライズなんだから、やっぱり隠れなきゃでしょ!」
よく分からない理論を持ち出しながら、少女は机の上に置いてあるトートバックの中から一着の洋服を取り出した。
「じゃあ、次は一足先にお店まで行って、この服を着て準備しててね。後の皆は六時までに必要なものを調達して、お店を飾りつけること!」
「あぁ、了解したよ」
「なんだかワクワクするね」
夕焼けに照らされた教室の中、少女達の作戦が始まった。
午後七時。指定された店についた楼は、暗い店内を覗き込んで首を傾げる。
「真っ暗?確か、このお店で合ってたわよね……?」
スマートフォンに映し出された地図アプリは、確かにこの地点を指している。更に言えば、この辺りには飲食店など、ここ一つしか存在していないのだ。間違えようがない。
「行くしかないわね」
ドアノブに手をかけ軽く引くと、扉は力を入れずとも直ぐに開いた。
「やっぱり開い……」
そこまで言った所で、不意に店の中が明るく輝いた。驚いて目を見張る楼の前に、黄色と白の花束を持った礼美が現れる。
「レ、レイ? どうして……」
「誕生日おめでとう、楼。君に似合う三つの花をプレゼントするよ」
「……もう、突拍子も無い事するんじゃないわよ」
慌ててそう言うと、楼は受け取った花束で顔を覆った。驚きと嬉しさとで、不可抗力に溢れた涙を隠すためだ。そんな楼を見つめながら、礼美は楼が『ある事』に気がつくのをじっと待つ。楼は、礼美の目論見通り、しばらく花束を見つめてから突然「あれ」と声をあげた。
「お花、二つしかないわよ?」
楼の問いかけに、礼美は嬉しそうに頷いた。そして、おもむろに楼の手を取ると、店の奥まで進んでいった。一番奥の席にあったのは、大きな窓。礼美に続き開けた窓から顔を覗かせた楼は、思わずあっと叫ぶ。
「綺麗……桜?」
「ソメイヨシノだよ。綺麗だろう? 一つ目の花はヤマブキ、二つ目が白いカーネーション、そして、三つ目がこれってわけさ」
「あんた、どこまでもいってもキザなのね。……ありがとう、レイ」
夜空の中に一際輝く桜の大木を見つめながら、楼はそっと呟いた。二人だけの空間に、はらりはらりと白い花弁が舞う、幻想的な夜だった。
少女達の企画したサプライズパーティはあっという間に幕を下ろし、魔法の溶けた帰り道。楼は、ずっと気になっていたことを礼美に尋ねた。
「ねえ、どうしてこの三つの花を選んだの?」
不思議そうに問いかけると、礼美は意味ありげに眉をあげて、まるで歌うように滑らかに話し出す。
「ヤマブキとソメイヨシノは、3月28日の誕生花なんだ。白いカーネーションは……秘密」
「な、なんでよ! そんな風に言われると気になるわ。教えなさいよ」
楼が食ってかかると、礼美は膨らんだ頬を長い指でつつき、可笑しそうに笑った。
「知りたければ、後で調べてみるといいよ。むやみやたらに知識をひけらかすのは、王子らしくないからね」
「なによ、カッコつけちゃって」
楼は顔を赤くしてそっぽを向く。手元の花束がふわっと香り、夜の風を色づけていった。
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イラスト:地域支援課職員 常磐 光紀
https://twitter.com/chisaki_nana/status/1376142112614281222?s=21
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