退院の日、お父さんと主治医さんが話している最中に、看護師さんはわたしにぬいぐるみをくれたんだ。
びっくりしたんだ。だってそのぬいぐるみ、多々薇さんにそっくりなんだもん。
わたしが言っていた多々薇さんの特徴を全部掴んであるの。
「そのぬいぐるみに向かって話してみて。
多々薇さんとずっと一緒にいれるよ。」
びっくりしたけど、それよりも好奇心の方が勝って声をかけてみたんだ。
「多々薇さん、こんにちは。」
『水百ちゃん…?こんにちは。久しぶりだね。』
あの夢と同じ、優しい声が頭の中に入ってくる。
それが嬉しくて、本当に久しぶりに泣いちゃった。
でも、泣いてるのお父さんに見られたくないから頑張って止めたよ。
「これからは、ずっとおしゃべりできるんだよ。」
『本当…?嬉しいな。これで水百ちゃんとずっと一緒だね。』
「うん、ずっと一緒……!」
「えっと…ありがとう、看護師さん……!」
お礼を言ったわたしを、お父さんは不思議そうに見ている。
「水百…?そこに看護師さんなんていないよ?」
「え…?いるよ……?…………あれ。いない。」
もう病院の中に入っていったのかな。
今の時期忙しそうだもん。
主治医さんにもお礼を言って、お父さんの車に乗る。
車の中でも、わたしはずっと多々薇さんと話していた。
「あの看護師さんすごいね。お名前聞いてなかったな…。」
『…大丈夫。きっと水百ちゃんの知ってる人だよ。』
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