キリエを歩く【シノ】
くー
キリエを歩く【シノ】
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いつもの扉をあけ、笑顔で挨拶。
「おはようございます!ニフ先輩」
その声に向かい会う笑顔…初めて会った時は緊張のあまりに、石のように固まっていた表情が嘘のよう。シノは一人、クスリと笑う。
午前は年に一度の住民票のチェックと整理に追われる。疲れに漏れる溜息に、ニフは静かにお茶を手渡す。この地で愛される世界樹のお茶…。
昼休み、2階に上がり二人で持ち寄った弁当を食べる。いつもの談話、いつもの笑い声。いつもの…
午後は窓口担当。街で起こるトラブルや相談を引き受ける。引き受けた事柄を書類に書き上げて、然るべき部署へと送るために封筒にまとめる。これは詰所、これは理事会本部…。出張所を閉めた後の静けさの中、二人は黙々と作業にかかる。沈黙をニフの一言が破った。
「…荷物はもうまとめましたか?」
シノはフッと手を止める。いつもの変わらない1日。今日だって何も変わらなかった。きっと明日もこんな日が続くのだ。…そう錯覚してしまう…いや、そう思っていたいのだ。
「明日からシノちゃんが居ないと…実感が湧かない…です。ふふ、ダメですね。先輩のくせに笑顔で送れないなんて」
シノは上目遣いでニフを見やった。泣き虫の先輩が必死に微笑をたたえている。
「大学に戻ったら、今度こそついに理事会員ですね。もしかしたら、尊敬する先輩とも働けるかもですね!楽しみだなぁ…私応援してますから!」
大きなカバンがふたつと、備え付けのベッドしかない自分の部屋…仕事を終えたシノを迎えた。明日、出張所の荷物を受け取って、そのままキリエを立つ。残された時間を胸に、シノは静かに眠りについた。
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クエストにお付き合い頂き、心から感謝致します。貴女が赴任したその街はどんな学びとなったでしょう?
是非、貴女の答えを教えてください。その歌声にのせて…
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