『廃人の歌』
吉本隆明
『廃人の歌』
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追悼。
冷えた不作為の罪を贖うかのように……
お借りした伴奏:Prayer X / Piano ver.
以下、『廃人の歌』より抜粋
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夕ぐれ時の街でぼくの考えていることが何であるかを知るために 全世界は休止せよ
ぼくの休暇はもう数刻でおわる
ぼくはそれを考えている
明日は不眠のまま労働にでかける
ぼくはぼくのこころがいないあいだに世界のほうぼうで起ることがゆるせないのだ
だから夜はほとんど眠らない
眠るものは赦すものたちだ
神はそんな者たちを愛撫する
そして愛撫するものはひょっとすると神ばかりではない きみの女も雇主も
破局をこのまないものは
神経にいくらかの慈悲を垂れるにちがいない
幸せはそんなところにころがっている
たれがじぶんを無惨と思わないで生きえたか
ぼくはいまもごうまんな廃人であるから
ぼくの眼はぼくのこころのなかにおちこみ
そこで不眠をうったえる
生活は苦しくなるばかりだが
ぼくはとく名の背信者である
ぼくが真実を口にすると
ほとんど全世界を凍らせるだろうという妄想によって
ぼくは廃人であるそうだ
#朗読
#吉本隆明
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私は、何もせず、資源を享受されていた罪を、血が出るくらい握り締めて、己と対話している。
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