第20話「花のフローラ」/やさしい花(奥華子)
プリンセス・アテナ
第20話「花のフローラ」/やさしい花(奥華子)
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第20話「花のフローラ」
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俺はグランツ王国聖騎士団、隠密部隊に所属している一兵卒。
今日は騎士団長殿よりある女について調査せよとの命を受けて、首都グラドの北西にある小さな森の中にやってきた。
その女とは、NORNというアイドルグループに所属する『花のフローラ』。
我が国のプリンセスであるところのアテナ様がプロデュースしているアイドルグループ、ミナーヴァのライバル関係にある……とアテナ様が言っていたグループのメンバーの一人だ。
これは俺の個人的な考えだが……正直なところ、NORNのメンバーには何かがあるんじゃないかと疑っているんだ。
だってそうだろう、どう考えても怪しくないか?正体不明の人外ばかりを集めたグループなんて……
というわけで今回は、与えられた仕事を勤勉にこなしながら、あわよくばその「何か」も見つけてやろうと意気込んで任務についているわけだ。
しかし、こんな森の中に一人でやってきて何をしようっていうんだ?
気配を消し、一定の距離をあけながら花のフローラのあとをつけていく。
しばらく進むと、ターゲットは小さな池の前で立ち止まった。
池……いや、沼か?
水は汚い緑色に濁り、遠くから見ても分かるほどドロドロと澱んでいる。
その水辺に、花のフローラはこちらに背を向けるかたちでしゃがみ込んだ。
何だ?何をしているんだ……?
その時。
『パキッ』
しまった、油断した!
ターゲットの様子を気にするあまり足元が疎かになって、小枝を踏みしめてしまった。
花のフローラがはっと顔を上げて、きょろきょろとあたりを見回す。
🌼「だ、だれかいるの……?」
まずい、立ち上がってこっちに来るぞ……!
こうなっては仕方がない、作戦変更だ。
俺は極力平静を装って、木陰から花のフローラの前に歩み出る。
「やあ、驚かせてすまなかったね。私はグランツ王国騎士団の警護部隊の者だ。
森の中に一人で入っていく女の子が見えたものだから、心配でついてきたんだよ」
きょとんとした顔でこちらを見るターゲット。
隠密行動用の軽装備しか着用していない状態で、この嘘は苦しいか……?
しかし、そんな動揺をよそに花のフローラは「なぁんだ」とにっこり笑って言った。
🌼「モンスターかやせいどうぶつかなにか、でてきたのかとおもっちゃった。
きしだんさんだったのね」
ほんわりとした優しい口調で喋る花のフローラに、こちらも肩の力が抜けていく。
「お嬢さんは、こんなところで何をしていたんだい?」
🌼「あのね、このいけをたすけにきたの」
「池を助ける?」
🌼「そう」
そう返事をして再び池に近付くと、その澱んだ水の中に手を差し入れるターゲット。
しばらくすると、花のフローラの手から出た赤い何かが水に溶けて広がっていく。
「それは一体……?」
🌼「これ?これはね、どく」
「毒!?」
毒だって!?
どういうことだ……怪訝に思ったのが表情に出てしまったのか、俺の顔を見るとターゲットは困ったように眉を下げて話を続ける。
🌼「このいけにはね、みずをよごすバクテリア……わるいきんがふえすぎてしまったの。
そのせいで、みずをきれいにしてくれる「いきもの」や「みずくさ」が、そだたなくなってしまった。
だから、わたしのちからで……バクテリアにはきくけれど、いきものやつちにえいきょうがないどくをながして、みずをきれいにするのよ」
「そ、そうだったのか……!いや、毒と聞いて不審に思ってしまってすまない……!
なるほど、お嬢さんにはそんな力が……どうやらエルフのようにお見受けするが?」
🌼「そう、わたしはエルフ。「花のめがみ」のかごをうけた、花のフローラといいます」
「フローラ……さんか、素敵な名前だ。もう用事は終わったのかい?よかったら街までお送りしよう」
🌼「いいの?それじゃあ、ティカのむらまで……」
「ああ、ああ!お安い御用さ。そのための我々、警護部隊だよ」
🌼「ふふふ、ありがとう、きしだんさん」
なんだ、とても良い子じゃないか!!
俺は彼女らを疑ったことを恥じ、楽しく会話をしながらティカの村まで彼女を送り届けた。
調べても所在不明だったから実際ティカの村には住んでいないのだろうが、エルフたちは自分の住処を自然の中に隠すことがよくあるので、そういうことなのだろう。
たくさん話ができたおかげで、報告書には多くの情報が載せられそうだ。
俺は軽い足取りで城へと帰るのだった。
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『━━━花のフローラ
NORNのメンバーの一人で、由緒正しい純血のエルフ族であり小柄な体格。
植物や毒に関する魔術を行使し、頭には魔術の力で創り出した永遠に枯れない花の冠をかぶっている。
(中略)
ふわふわとした可愛い話し方で優し気な笑顔も魅力的。』
👑「何よ、最後のは個人の感想じゃない!!!そんなことは聞いてないのよ!!!」
他のNORNメンバーのものと比べて異様に長い(そして内容はどんな食べ物が好きだの、憧れのピアニストは誰だののどうでもいい世間話のような内容である)調査書を握りしめ、文句を言うアテナ。
👑「うーん、ここまで見ても肝心なNORNの正体に近付けるような内容がないのよね。
どこに住んでいるとか、メンバー同士の関係とか……どうしてNORNが結成されたのか、とか。
ますます気になるわね……NORN、あなたたちは一体何者なの!?」
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Lyric
🌼どこに向かえばいいのか 迷い探して 歩いた日々
君がくれた白い花が 何よりも優しく 見えたんだ
君が 願う 人になりたくて
僕は ずっと 歩いてきた
愛する人を 守れるように 人は生きていくのかな
僕の未来に 僕のこたえが
あると信じている
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🌼「ヴェルダンディさま、ただいまもどりました」
😈「フローラ、無事で戻って何よりだ」
🌼「ええ、それはもちろん。ヴェルダンディさまのおっしゃるとおり、やはりびこうされていました」
😈「ああ、だろうな。あれだけ目立てばどうしてもアテナは私達の正体が気になるだろう……絶対に私達のことを嗅ぎまわるはずだ」
🌼「それにしても、おまぬけなおんみつでしたよ。こえだをふんでおとをたててしまうなんて……
むしをするのもふしぜんでしたから、わざとこえをかけておはなしをして、わたしのじょうほうをたーっくさんきいていただきました。
あいどる「花のフローラ」としてのおもてむきのじょうほうをね……ふふ」
😈「それでいい、よくやったぞ」
🌼「はい!ヴェルダンディさまのおおせのままに」
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【ヴォーカル】
🌼花のフローラ
道連
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【伴奏】
SHIGE様
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【テキスト】
あきなと。
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