【声劇】君は人ではないようだった【台本】
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【声劇】君は人ではないようだった【台本】
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あの日君は、とても楽しげでそれでいて悲しそうだった。
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「お前の家に、よくないものが憑(つ)いている」
と、君が言った。
君の言うよくないものが私にはわからなかったけれど、「祓ってあげよう」と嬉しげに君が言ったので、そういう類(たぐい)のものだと察して。
君は、一人立て籠りほんの少しで出ていった。
私は急いで君がいた部屋の障子を開け放した。
そして、言葉に詰まった。
そこらじゅうに飛び散っている血潮。
カラスのような黒い羽。
畳に突き刺さった日本刀。
「見たね」
出ていったはずの君の声が耳元で囁いて。
勢いよく振り向けばそこに君がいた。
君の両目は血のように紅く光っていた。
私は蛇に睨まれた蛙のように動けず、ただその場で立ち尽くしていた。
「見たね」
と、もう一度君が言い、私の頭を撫でて笑う。
その目は笑っていたが、やはり紅いままだった。
君は人でないようだった。
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この台本また投稿したら?という声を頂いたので、旧垢で投稿したそのままの形で再び。
あなたの思うままに。
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