雪涙❄課題台詞①
--
雪涙❄課題台詞①
- 14
- 0
- 0
◇雪涙
――窓からは、初雪が見えていた。
薄暗いマンションの一室。僅かに射し込んだ星灯り。
母が眠っている間に、邪魔にならないように家事を済ませるのが雪涙の日課だった。
その日も、いつもと同じように深夜に目を覚まし、そっと母の部屋を覗く。
そこには、ベットに蹲るようにして眠る、いつもの母がいるはずだった。
だけど。雪涙の求めた光景は、そこには無かった。
乾いた空気。微かな香水の匂い。足下に散らばる薬の欠片。
そして、眠ったように動かない――永遠の眠りについた、雪涙の母親。
その光景が、雪涙の瞼に、鮮明に焼き付いている。
それからのことは、よく覚えていない。夜が明けるまで母を呼び続け、気付いた時には、雪涙の世界は失われていた。
Comment
No Comments Yet.