完結「“蒼“に沈む珈琲屋、顛末」
秘密結社 路地裏珈琲
完結「“蒼“に沈む珈琲屋、顛末」
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完結「“蒼“に沈む珈琲屋、顛末」
昔々、南の海のどこか遠く。
機械の文明によって栄えた小さな国がありました。
機械の叡智を司る王様は、聡明な人魚を妃とし、国には平和が保たれていました。
しかし、それも束の間、近隣の大きな国家はその技術を我が物にと、話し合うことを拒み戰の火種を放ったのです。
王様はこの先払う事になる犠牲と財産を天秤にかけ、自らの投降と技術の継承を引き換えに国を守ったのち、毒薬によって記憶を失います。
王妃様への“ラブレター”を託した機械仕掛けの海ガメが、自分の死後王妃の元に届くようにと、カメを眠らせ...
王妃様と、平民の中で最も機械を愛した職人の家系へ、全ての叡智を託した後で。
王妃様はそのことを知らず、言いつけを守り、海の底で独り王様の無事を祈って余生を過ごしました。機械人形を作り、陸で愛した我が国の思い出と戯れる毎日。
寂しさを募らせたある日、一匹の機械仕掛けの海ガメが現れたのです。王様からのラブレターを受け取った彼女もまた、自分の死後に彼の元へ届くようにと、もう一匹の海ガメを作り出して、深い海の底で天寿を全うしたのでした。
時は流れ、いくばくか。
人魚の少女、テルは、“人魚の王妃“の墓守として、機械人形の街の門番に就任。そして、海の底で仕事に勤しむ彼女の元へ、機械の叡智を受け継いだ一族の末裔、ヨウが現れ、二人は恋に落ち
...悲恋の歴史は、繰り返します。
極秘に海底の街に訪れ、言い伝え通りに機械人形の修理を請け負っては、王妃の伝説を調査していたヨウ。その様子を訝しんだ強欲な悪人が、海ガメに隠された秘密を我が物にするため、ヨウをつけ狙ってやってきたのです。
ヨウは自分のせいで彼女に危害が及ぶ前にと、離別を受け入れられないテルを諭し、自らの命と引き換えに、海ガメの秘密を葬りました。
残されたテルは絶望と怒りに駆られ、陸へ上がったものの、手練の悪党相手に仇を討つことはついに叶わず。彷徨い歩いた先で、ヨウの住んでいた部屋へたどり着きます。
そしてそこで、ヨウが守った我が身を慈しむ気持ちと、苦悩の間で苛まれ、記憶を消すことを決意しました。
いつか、どこかの王様が口にした、忘却の毒薬で。
今度こそ生まれ変わって、幸せになるのだ、と。
それこそが、恋人の願いを叶えることになるのだから、と。
そう願ったはずだったのに。
数奇な運命の波に揺られて、彼女は記憶を取り戻し、また因縁の土地へと足を踏み入れようとしています。
あの時と違うのは、絶望や怒りに呑まれることのない強い心と、彼女を囲む大勢の仲間。
歴史はもう繰り返させない。
彼女は、ヨウの形見の短剣を握りしめ、静かに海へ一礼したのでした。
もうじき、飛空挺は旅立ちます。
目指すは大都会、ニュー・コフィンズ、通称“悪党の街”。
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(蒼に沈む珈琲屋 完)
音源制作者:harumio1529
BGM歌唱担当: 文化財3人組
白銀:さい
ダンデ:はこまて
シズカ:ゆぅ
敬称略🙇♀️
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