ビースト・ダンス
鶯丸(cv.花鳥) × 大包平(cv.虹月)
ビースト・ダンス
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45.ビーストダンス
これは遠征に出た2人が突然の嵐に見舞われ、帰還が叶わなかった時のこと。
鶯丸と大包平は主に連絡した後、山中をふらふらと彷徨っていた。
「何か建物はないのか……!」
「ああ、この嵐の中では耐えられん。霊獣伝説の残る寺や神社とまで行かずとも、旅館でもあればいいんだがなぁ」
「この山中に旅館があるわけが……待て、あれを見ろ鶯丸」
2人の視線の先にあったのは木造の美しい旅館。遅い時間だが窓からは灯りが漏れており、人の気配もある。「×〇旅館」と書かれた看板には「温泉宿」の文字もある。
嵐はますます酷くなり、全身に雨粒が叩きつけられ、地面はぬかるみ足を取られる。
鶯丸と大包平は目配せして同時に大きく頷く。選択肢は一つ。2振は旅館の中に入っていった。
「あらあら、こんな嵐の中ようこそおいでくださいました。お兄さん達運がよろしいですよ。本日は一室のみ空きがあるんです」
さあさあこちらに、と女将に案内された先は2人用の一室《仮睡の間》。質素ながらも心落ち着く部屋に鶯丸と大包平は安堵する。
「こんな山奥に宿があるとは。幸運だったな、大包平」
「屋根と壁さえあれば良いと思っていたが、こんな充分な部屋に泊まることができるとはな。体も冷えた。温泉にでも浸かろう」
鶯丸と大包平は大浴場にある温泉で体を休め、入り口にいた女将に礼を言い、部屋に戻る。その間、他の宿泊客には出会わなかったが、2振は疲れもあったためかその事には気づかず、そのまま布団で眠った。
翌朝、大包平が目を覚ますと鶯丸はすでに起床しており、持参していた水筒で呑気に茶を飲んでいた。
煤けた埃だらけの廃墟で、だ。
「おはよう大包平」
「こ、これはどういうことだ!?」
「一本取られたな。俺たちは狸に化かされていたようだ」
「狸?……まさか、この部屋の名か!」
「《仮睡の間》……タヌキの間、だったということだ」
「む……この俺が獣にしてやられるとは……」
「まあ泊まれたことに変わりはないし、良いじゃないか。さあ、本丸に帰還しよう。主達にもこの体験を話したいな」
#おーるはろーずいぶ
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