ネクロの花嫁
鶴丸国永(cv.びゃく) × 一期一振(cv.ぷー)
ネクロの花嫁
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20.ネクロの花嫁
本丸の片隅に石が積まれている事を知らない刀剣はいない。しかし、何を目的として積まれた石であるかを知る刀は数少ないのだった。
さて、先日顕現した鶴丸国永がその謎の石に興味を示さないわけがない。
鶴丸国永はその石を見つけると、周りの刀剣に尋ねて回った。
「ここの本丸には折れた刀がいるのかい?」
どんなに古参の刀剣に尋ねても答えは同じ。
「この本丸で刀剣男士が折れたことはない」
積まれた石の形状や位置から折れた刀剣の墓ではないかと推察していた鶴丸国永は、落胆して石の周りをぐるぐると回る。
墓ではないなら誰かが遊びで石を積んだのか?
いや、遊びで積むにしては悪ふざけが過ぎる形状か
では一体この石は……
「その石は墓です」
通りかかった一期一振は鶴丸国永にあっさり石の正体を明かした。
「墓?でもこの本丸で折れた刀はないんだろう?」
「ええ、刀剣男士の墓ではありませんな」
「じゃあ誰の墓なんだい?」
「……弟が、大事にしていた器の墓です」
とはいえ、と一期一振は続ける
「この下に器が埋まっているわけではありません。弟の1人が顕現以来ずっと大事に使っていた器が欠けてしまい、使えなくなってしまってひどく落ち込んだことがありまして。その時、粟田口の兄弟で慰めるために墓を建てたのです。器に宿る付喪神の墓。完成した墓を落ち込む弟に見せたのですが……『この器は欠けていても好きなものだから側に置いておきたい』と言われてしまい、結局御役御免になった、といった経緯ですな」
鶴丸国永はなるほどとだけ頷き、以来石に対する詮索はやめた。
一期一振が話していた落ち込んでいた弟は誰なのか。
死んだあとに残った空の器だけを残しておいて意味はあるのか。
「……なんてことを詮索しても誰も楽しくないじゃないか」
鶴丸国永は今日も楽しさを求めている。
#おーるはろーずいぶ
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