第八話「咲くや、此の花」/春よ、来い(松任谷由実)
プリンセス・アテナ
第八話「咲くや、此の花」/春よ、来い(松任谷由実)
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第八話「咲くや、此の花」
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👑「これで今日の面接は最後ね。
5番のあなた、前へどうぞ」
呼ばれて進み出たのは、長い黒髪を結い、和服を着た娘。
👘「お初にお目にかかります。わたくしはサクヤ・コノハナと申します、よろしくお願いいたします」
👑「よろしくね、サクヤ!
じゃあ、まずは自己紹介してくれる?」
👘「はい。
わたくしは皆様のように遠くから馳せ参じたわけではないのですけれど、ここ王宮のある首都グラドの南方に居を構えます、香道を伝えております『此華流』の宗家の一人娘です」
👑「コウドウ?」
👘「アテナ様は華道や茶道はご存知?」
👑「ええ、それなら昔教わったことがあるわ。ぜんっぜん向いてなくて、それっきりだけど!」
🗡「姫様は大人しく座っていることがそもそも苦手でしたからね……」
👑「う、うるさいわね!」
👘「ふふ、誰にでも向き不向きはありますものね。
華道はお花を、茶道はお茶をそれぞれお作法に則って楽しむように、香道はお香の香りを楽しむ芸事ですのよ」
👑「なるほど!だからサクヤのキモノからは良い香りがするのね。
でも、そんな伝統芸能の家元の娘さんがアイドルなんてしていいの?」
👘「それなのですけれど、アテナ様」
👑「え?どれ?」
👘「わたくし、家出をしようと思っておりますの」
👑「い、家出!?」
⛪「えーっ、あたしと一緒なんだね!あなたも何か嫌なことがあったの?」
👘「そうですわね、あった……と申しますより、これから嫌なことが起こる予定だから、かしら。
わたくしの家はオールドジパングにルーツを持つ古くから続く家系で、現代にそぐわないような決まり事がたくさんありますの。
その中で今までも暮らしてきたのですけれど……」
サクヤは目を伏せて深いため息をつく。
👘「これまでは、数ある不承の決まり事を甘受して参りました。
けれど3ヶ月後、わたくしは見も知らない、親が決めた男性と結婚することになっていますの。
それだけは……どうしても耐え難くって……」
👑「そんな!それはグランツ王国の憲法にも反することよ!本人たちの納得なく結婚なんて……」
👘「ええ、それは家の中の誰もが分かっておりますの。けれど、それが古くからの家系を守るための習わし……家を守るために、代々続いてきたしきたりなのです」
👑「……だから家出を?」
👘「そうですわね……でもきっと、これはわたくしの我慢の最後の一滴だったのだと思います。ずっとコップに溜め続けていた不満が、これで溢れてしまったのでしょうね。……随分と反抗期が遅れてきてしまったようだわ。
でもね、アテナ様。最初の動機は不純かもしれないけれど、わたくしがアテナ様のアイドルグループに入りたい気持ちは本当ですのよ。自分の心を歌や踊りで表現して、それを見たり聞いたりしたお方にも届けるって素敵な事だわ。
それにわたくし、日本舞踊も習っていましたから、踊りの腕にも少しは覚えがありますのよ」
👑「そう……そうね、とっても素敵なことよ!サクヤはサクヤの決めた道を歩けばいいの!一緒にアイドル頑張りましょうね!」
それを聞いて、サクヤは優雅な所作で頭を下げた。
👘「ありがとうございます、アテナ様。わたくし、今とても期待で胸がいっぱいだわ」
ここに、アテナ親衛隊兼『とびきりかわいくて、かっこよくて、王国の中のどのアイドルよりも素敵な、私だけの』アイドルグループのメンバーが揃ったのだった。
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Lyric
👘淡き光立つ 俄雨
いとし面影の沈丁花
溢るる涙の蕾から
ひとつ ひとつ香り始める
それは それは 空を越えて
やがて やがて 迎えに来る
春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
愛をくれし君の なつかしき声がする
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く
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【ヴォーカル】
👘サクヤ・コノハナ
7
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【伴奏】
ぶる〜様
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【テキスト】
あきなと。
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