【朗読】桜の森の満開の下
演奏:つかT様/声:蒼
【朗読】桜の森の満開の下
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桜の森の満開の下の秘密は
誰にも今も分りません
あるいは
「孤独」というものであった
かも知れません
なぜなら
男はもはや孤独を怖れる必要が
なかったのです
彼自らが孤独自体でありました
彼は始めて四方を見廻しました
頭上に花がありました
その下にひっそりと
無限の虚空がみちていました
ひそひそと花が降ります
それだけのことです
外には何の秘密もないのでした
ほど経て彼はただ一つの
なまあたたかな何物かを感じました
そしてそれが
彼自身の胸の悲しみであることに
気がつきました
花と虚空の冴えた冷めたさにつつまれて
ほのあたたかいふくらみが
すこしずつ分りかけてくるのでした
坂口安吾「桜の森の満開の下」
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42618_21410.html
#蒼の朗読
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