午前五時 空は僕の願いを素通りして白んでゆく。
「夜が明けなければいい しばらくここに、どうか居させて欲しい」
誰もが独りでいることを許されるような
この時間だから。
誰もが知る、綺麗で季節を象徴するあの花は皆受け入れる。
「どれもみんな綺麗だ」なんて大した知識もないくせに、偉そうによく言うよ。
その影で咲く名もなき花は踏みつぶされてしまっていることにも気づかずに。
何もかもに値段をつけて、価値を図りたがるこの街は、
自分らしさや個性を求めたがるのに、意図も容易く自分自身の中にある小さなものさしではかって、安く見繕う。
時間をかけて見つけたそれを否定され、うなだれる僕らの感情なんて知らない今日は逃げ出して、明日を追い掛ける。
金も銀も銅も鉛も、稀代の名画も、数多の駄作も、夜の闇は平等に全てを黒く染める。
だって価値なんて、知りやしない、有りもしないんだから。
全てが見えない世界なら、こんな僕の事さえも許してくれるだろうか?
「どうか夜よ、明けないで欲しい。
薄暗いこの時間を。
この時間にしばらく居させてくれ。」
僕が僕として存在することさえも許されるような気がして。
そして今日もまた叶わぬ願いを噛み締めている。
また朝がやってきて、今日という日が始まる。
その光が僕という人間を晒し上げる。
それと同じ光が、誰かの居場所を彩って新しい一日を作り出す。
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