【朗読】第一夜
音楽:そうすけ様/文章:夏目漱石/声:蒼
【朗読】第一夜
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こんな夢を見た。
──
百年待っていて下さい
百年、私の墓の傍に坐って
待っていて下さい。きっと逢いに来ますから
自分は ただ待っている と答えた。
すると、黒い眸のなかに鮮かに見えた
自分の姿がぼうっと崩れて来た。
静かな水が動いて写る影を乱したように
流れ出したと思ったら
女の眼がぱちりと閉じた。
長い睫の間から涙が頬へ垂れた。
――もう死んでいた。
自分はそれから庭へ下りて
真珠貝で穴を掘った。
真珠貝は大きな滑らかな縁の鋭い貝であった。
土をすくうたびに
貝の裏に月の光が差してきらきらした。
湿った土の匂いもした。
穴はしばらくして掘れた。
女をその中に入れた。
そうして柔らかい土を
上からそっと掛けた。
掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
それから星の破片の落ちたのを拾って来て
かろく土の上へ乗せた。
星の破片は丸かった。
長い間大空を落ちている間に
角が取れて滑らかになったんだろうと思った。
抱き上げて土の上へ置くうちに
自分の胸と手が少し暖くなった。
『夢十夜』より
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#蒼の朗読
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