D91 膝丸
紫苑本丸
D91 膝丸
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D91 膝丸
今の主ではこれ以上の結界が立てられるとはおもっていないが、もし強い心があるとするのならピンチはチャンスになる。
「膝丸…、正直に言って欲しい。膝丸が前にいてくれる限り今の私は大丈夫だから。」
そういう主は、前よりも頼もしかった。
「全方向から敵襲20、みな強敵とみている。一人一振相手するのは今の俺たちには厳しい。だから、結界を…貼り直して欲しい。」
「…結界を貼り直しても無駄なのはわかってるよね?」
「…頼む。」
「やるしかないんだよね。」
やらないと死ぬ、…あいつらの苦労もなかったことになる。
ー
「見つけたぞ…。」
思ったより来るのが遅かった…。
結構な時間戦ってくれたと思う。
「主は気にせず貼り直してくれ…。」
俺は刀を鞘から出し、構える。
みんなの闘志は俺が繋ぐ…だからどうか、間に合ってくれ。
ー
「っはぁ…はぁ…。」
もう何時間も戦ってきた…、そのお陰か初めより人数は減って後一振。
「ここががら空きだ。」
「ぐぅっ!!」
主は……結界を張り直しつづけながら俺の後ろで泣いている。
「…もう、終わりだ。」
立つことさえも困難な俺を折るのは容易いことだろう。
「…あ……る、…じ。…に…げ…。」
固く目をつむっていた主の目が一瞬開かれた。
あの日と同じく…、黄色の綺麗な瞳だった。
「やめてっ!!!!!」
主の声が耳一杯に入ってきた。
「…じょう……で…き…だ。」
今の一言できっと……結界は貼り直せただろう。
主は本当に良くやった…みんなも。
だから今は…少し眠らせてくれ。
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