【台本】それがまだ悪夢だった頃
お名前をどうぞ(台本:けい)
【台本】それがまだ悪夢だった頃
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一人称・語尾など変更して頂いても大丈夫です。
【台本】
それがまだ悪夢だった頃、午後の風にそよぐカーテンは、舞踏会で舞うドレスのように、もっと優雅に揺れていた。
指で掬い取った君の血は、高価なルビーの雫のように、もっと上品に艶めいていた。
花瓶に生けた薔薇たちは、もっと控えめに香っていて、君の悲鳴にそっと耳を澄ませていた。
ナイフの刃に映る自分の顔を見て、僕は心から安堵の息を吐く。
……寝覚めが悪い。
全てが不愉快だ。
いつの間にか身を置いていた現実に焦点を合わせても、何もかもがそぐわない。
何もかもが疎ましく、何もかもが足りなかった。
苛立ちと後悔に飲み込まれる理性は、最期に僕を殺して眠った。
汚れたシャツで拭ったナイフと、血生臭い水面に溶けた惨めな花弁。
それがまだ悪夢だった頃、僕はまだ知らなかった。
救いを求める手を踏みにじり、なけなしの憐憫で悟る。
誰に言われるまでもない。
夢は、叶わないから美しいのだ。
(憐憫…れんびん)
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