働いて、働いて、寝る
悒うつぼ
働いて、働いて、寝る
- 24
- 1
- 0
ここ数日の記憶は曖昧だ。最も憑神に同化してしまったフィーの身体への反動は大きかった。仕事や訓練で魔法に慣れているみりんとは違い、戦闘面では通常の民と変わりない。気だるさが抜けない体…しかし、更に残念な事に、彼女の性分が追い打ちをかける。
「…フィーちゃん、お願い。少し休んでちょうだい?見るからに顔色が悪いわ…」
「夏は植物が活発になります!水涸れを起こして枯れたら大変ですから!」
頑なに園長の要望を断った。それには彼女なりの理由もある。…改心したとはいえ、手渡してきたのは無歌の種…園長は主の話を信じて育ててるけど…何かあったら、今度こそ私が…!!園長から目を離さない為にも休む訳にはいかない。
とは言え、体力、耐久性では全種族で最低の部類に位置づけられるフェアリー族。体に鞭打って働く毎日がそうそう長くは続かない。ついに羽の色すら鈍ってきた。そんな日に救世主のように現れたニフ…。
「…こ、これを飲んだらみんなに心配されないで仕事できるかも…」
今思えば、完全に血迷っていた。パッと見は紅茶の様な赤い綺麗な液体。お茶なのか、湯気が立っていた。
「アグルさんのお土産の火竜の鱗に、ケルピーの角をブレンドした薬袋と世界樹の紅茶を一緒に煮出しました!月の泪石を入れて作っているので、仄かに甘くて飲みやすいです!今小さなグラスお持ちしますね!」
水晶で作った器に注がれたそれを飲み込んだ。全身が燃え上がる様な感覚、羽の先までピリピリと染み渡っていく。なんだ!?よく分からないけど、私…なんでも出来る!!!
ありがとうございますの礼もそこそこに、弾丸の様に飛び去ると、園芸店まで一直線。あはは!たったこれだけの距離に息切れしてた自分が馬鹿みたい!笑いながら掃除道具を手に取り、働く、働く、働く。ああ、もう終わってしまった!今度は売り物の花の世話!働く、働く、働く。え?もう終わり??だめ!手が止まらない!店を飛び出し植物園へ。
「フィーちゃん?元気になったのかしら…きゃっ!」
園長の存在すら気づかないフィーは凄いスピードで横切り、危うく園長は転びかけた。目を丸くする園長。程なくして、遠くの方でポポポン!と雑草が宙を舞った。あからさまに様子がおかしい。園長は不安に駆られてフィーの元へ駆け寄った。
「フィーちゃん?大丈夫??」
「あああ!園長!!ご心配をおかけしました!!私!もう大丈夫です!いえ!なんでも出来ます!なんでもです!なんだって頼んで下さい!!私、出来ます!出来ます!でき…」
ブレーカーが落ちたかのように、フィーはグルンと白目を向いて、雑草の上にパサリと倒れた。
真っ暗な闇…奥の方で怒鳴り声が聞こえる…誰だろう…さとらさん…?
「よりによって、純血種のフィーちゃんに属性のキツいもの接種させたら反応がいいんだからダメでしょ!火竜の鱗は火の属性持ちか、体の大きな獣人じゃない限りは、入れてもごく少量じゃなきゃダメだし、フィーちゃんはもってのほか!しかもケルピーは沼にいる生き物だから、風が滞るの。風のシルフの血が強いんだから影響受けるでしょうが、もー!…憑神の加護とヤミィのチークが効いてたから良かったものの…あのままお茶が効き続けたらどうなってたか!」
「あまり怒らないであげて…さとらさん…ちゃんとフィーちゃんを休ませなかった、雇い主の私がいけないのよ。本当にごめんなさいね…」
「ごめんなさぁぁい!さとらさんんん!!フィーさんはどうなってしまうんですかぁあ!!」
怒鳴り声の後に、優しい声と、泣き声が続いた。
「アカツキさんが解毒薬置いていってたから何とか大丈夫よ…後はゆっくり寝て、寝て、寝てもらうわ。彼女、きっと働きたがるからちゃんと見ててあげてくださいね」
…それは困る!私が横に居ないと無歌が…!目覚めようと藻掻く意識、そこに暖かく優しい手が頭を撫でる感触。
「ええ、私も不安だから…しばらく家で泊まってもらうわ。広い家に1人なのですもの、寂しかったから、私、嬉しいわ」
ふふふっと弾むような笑い声が聞こえた。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇
賽子クエスト 失敗
リザルト
クリティカル 0
確率 1/3
オーバーキルワード 無し
Comment
No Comments Yet.