ふわり異世界
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ふわり異世界
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「ドキドキするな!!話を聞く度に想像が広がっちゃうの!」
ふわふわの夢見る栗色が踊る隣には、木漏れ日に煌めく虹色の羽。
「ふふふ。きっとその想像に負けない素敵なところです。何も無いところだけど、大事な場所…」
2人は世界樹の森の中を進んでいた。売り物にする植物を探しに森に入った時襲われ、逃げる途中たまたま見つけたシルフの聖地。フィーは花を求めて店に訪れていたちぇりに、こっそりその話をしたのだ。すると、その聖地をどうしても見てみたい…とちぇりは夢見るようになり、今日やっとその場へ連れて行ってもらえる事となった。
夏の気配が忍び寄る世界。木陰と植物からの湿度で大分涼しいのだが、沢山進んだせいで汗ばむ2人。襲い来る魔族は防御や蔦の足止めで協力しつつ進み、やっと目的地へ着いた。
「わあぁ!絵本の世界みたい!!」
耳を靡かせ尾を元気に動かしながらちぇりは叫んだ。フィーが訪れたあの時と何も変わらず、聖地、世界樹の窪みは2人を出迎えた。リンリン…と鈴のようなシルフの声に、大きく育つ世界樹の若木、その横には様々な鉱物を含んだ風化した岩が転がる。窪みを埋め尽くす植物達…。世界を小さく切りとったような、不思議な空間。フィーの周りを嬉しそうに光の気が飛び回る。
「ふふ…ただいま、みんな」
その姿をニコニコしながら見つめるちぇり。せっかくなので、若木の下で持ち寄ったサンドイッチを広げてパクつく…楽しいランチ。しかし、その時間はあっという間に闇へと落ちた。
「!!!」
世界樹に住み着く巨大な蛇が木漏れ日の入る穴や出口までも全て塞いでしまったのだ。慌てる2人の耳に寝息が聞こえ出す。どうやら悪意によるものではなく、休む場所に選ばれてしまったのだろう。起こそうとフィーは穴から見える蛇の腹を叩き、ちぇりは大声で吠えた。アオーーン!!
「……あの時の声が聞こえた」
今度は地面から声が聞こえる。まさかの新手か!2人は震えながら身構えると、暗闇の中に蛍石がぼぉっと輝く巨体が地面から生えだした。フィーは驚きのあまり気を失いかけるが、ちぇりは嬉しそうな声を上げた。
「鉱石のノームさん!!」
風の精霊、光の気もノームに向かいふよふよと飛び回る。
「風の眷属の聖地に踏み入れる無礼、許して欲しい。恩人の声がしたのでな…」
そう言うと大地に手を付く。ノームの力に反応して、隠れていた蛍石が煌々と輝きだし、その光に呼応して、発光植物もキラキラと光を放つ。暗闇の中、まるで宇宙を浮いているかのような錯覚に陥る。ボヤリと照らされる蛇の腹。
「成程…閉じ込められたのだな、恩人とシルフの末裔…今退かせよう」
「待ってください!」
2人は声を合わせてノームを止めた。自身に生える蛍石を輝かせて、ノームは振り返る。
「四元の精霊が二柱も集まるなんて!しかもこの風景…もっと見ていたいです!ね?」
フィーがそう言うと、空間に鈴の音が響き、風が充ちた。発光植物が風を受けてヒラヒラと舞い落ちる。シルフと合間り、流れ星のようだ。大地に立っているのに浮いてるような、昼なのに真夜中のような、現実なのに夢のような、楽しいのに…どこかふわりと不安になるような…ときめく違和感の渦。
ならばアッシャーの子等よ、古き我等の話を聞くか?と、ノームとシルフの話をノームが話し始める。シルフは羽や額に触れて直接像を2人に送る。生きることに憧れ、人の真似をし続けたフェアリーの始祖のシルフと、受肉の径を最後まで反対しながらも、彼を理解し後を追ったドワーフの始祖のノーム…。隣で見つめていた我等は気が気ではなかったな…と互いに笑う、大地と薫風。あまりに現実離れした時間だった。もしかしたら、これは最初から夢だったのかもしれない。蛇が動き出したのを確認し、精霊達は2人を夜の迫る街へと送った。
「おはようございます、いらっしゃいませ…あ、ちぇりさん」
「おはようございます…昨日…私達って…」
夢なのかもしれないという不安は私だけじゃなかった!2人は互いの態度を見て、ホッとした。フィーが手帳を開くと、そこには確かに発光植物の種が綺麗に保管されていた。
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聖地にて、精霊とお話しました。
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