だってショーがなイ!
天月-あまつき-
だってショーがなイ!
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「理不尽じゃねぇか?一緒に旅をして、常に大事に思って、世話だってなんだってやったのは俺だぞ!?なのに、最近会った程度の奴にあっさり取られるこの思い!許されるわけがねぇ」
「全くそだネー!わかるヨ」
「スノウもスノウだぜ!あんなに懐いて…いつだって俺の肩に乗ってたくせに、なんだよ!最近じゃ呼んでも乗りやしねぇ!可愛くねぇぇえ!」
「全くそだネー!わかるヨ」
「だから…あれだ…理不尽だ!うん…な」
「全くそだネー!わかるヨ」
………
「…おいおい…聞いてんのかよ。適当に俺の話流してねぇか?そうならオニーサン泣いちゃうよ?」
「失礼ネ!ちゃんと聞いてるヨ!!よく分かるカラ、わかるヨて言ってるネ!」
ふんす!と怒るメアリの姿を見て、一応は聞いているとは分かったが…
「なんだかなー…余計に虚しくなったわ」
「なな!何でネ!?メアリ相談乗るの1番得意ヨー!嘉嘉では皆メアリを頼るネ!」
嘘だろ…と言おうと思ったが、アグルは飲み込んだ。今はそんな気分ではない。窼の外でスノウが素通りしたのがアグルの目に飛び込んだのだ。
「はぁ…どーってことないはずなんだ…なのに…いちいち反応しちまう心が嫌になるぜ。女々しいったらない…やれやれ」
「全くそだネー!わかるヨ」
「またそれかよ!」
「だて、分かるもん。メアリ、そんな場面何度も見たヨ…メアリもそだし、大道芸を学ぶなら一緒に住まなきゃならなイ。から、皆恋人サンや友達、家族から離れるヨ。笑顔で手を振る人もいたし、ずとずと泣いてる人も居たネ」
アグルは静かにタバコに火をつけた。ニヤケ顔をやめ、真剣にメアリに耳を傾ける。
「家族も友達も居ない人もいるヨ。ケドケド、門下生は家族ネ。独り立ちする時は皆でバイバイするカラ、修行場の門前はドラマでいっぱいヨ…メアリだて…」
ニコニコのメアリは表情を変えないまま、目を開いた。…じわぁ…薄らと目に涙が滲んだ。
「哎、あははは!だからネ!わかるヨー。出てく方も、出ていかれる方もメアリ知ってるカラ」
満面の笑みで、胸を張る。何処までも明るく振る舞うメアリ。ふー…アグルは煙を吐き出した。
「まったく…そーだな。よく分かるよ」
ぼん!と乱暴にメアリの頭に手をのせる。メアリの顔も見ずにヨシヨシと髪を掻き回す。
「やーね、こんな小さな奴のが俺より大人だなんてな。…沢山別れを受け止めてきたんだな」
「エッヘン。ソヨソヨ!別れる時も別れられる時も、大好きは変わらないネ!だからいっぱいいっぱい幸せ願うヨ!笑っててほしいネ!だから…だからぁ…やめるヨォォ…」
相変わらずメアリの顔を見ずに頭を撫でるアグル。頭から伝わるぬくもり、ほっとする人の温かさが伝わってくる。
「いつまで撫でるネェェ…グスッ!メアリ、アグルに笑顔届けに来たよ!!なんネ!ズルい!アグル、ズルい人!!」
「はぁあ!?俺の優しさになんて事言ってくれちゃってんのよ!…って、ぶふっ!!」
初めてメアリの顔を見たアグルは顔を背けてプルプル震え出した。手からも震えが伝わる。
「鼻………赤……ぐふっ!!」
「哎呀ーー!人の顔みて笑う!良くない!アグル悪い人ネ!!謝るヨ!謝ても許さないヨー!!」
メアリは立ち上がって丸まったアグルの背中をボコボコと殴り出した。
「ぶは!悪ぃ!悪ぃって!!いててて!あー、ほらあれだ!笑顔届けてもらった!な!俺笑えてるよ!なって!許してくれよ」
絶対許さないネ!と固く腕を組むメアリ。笑い終え、ふーっと一息つくと、慈しむ目でメアリを見つめた。こいつも同じなんだと微笑む。
「俺の気持ちも、お前の気持ちも同じだ。どちらも間違ってねぇ。相手の幸せを願う気持ちも、相手を思うと鼓動が揺れるのもさ。ただ、その強さがどちらが強いかってだけさね。やれやれ、この街でお前の泣き顔見たのって俺だけじゃね?いやー、弱気になってみるもんだわ」
まだ言うカ!!とまた腕を振り回してきたが、今度は新しいタバコを咥えて、ヘラヘラ笑いながら軽やかに避けた。
「笑顔のお裾分け。笑わせてばっかで、誰がお前を笑わすんだよ?…なんてな」
最後には2人とも、自然で優しい笑顔が浮かんでいた。
「…でも、わかるヨ。全くそだヨー。恋、素敵ネ…その人を思うだけでドキドキソワソワ!いてもたっても居られないネ!メアリも…フフフフゥ」
「…おいコラ、ちょっと待て。お前、本当に今までの話分かってたのかぁ!???」
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柘榴石を手に入れました。
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