紙一重の対極
ハチ
紙一重の対極
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…最悪だ…
面白い仕事を流してくれると聞いて、丁度銃を試したいのもあり、アグルとかいう男の元へ向かった。仕事の話をしていた時だ、香水の匂いが鼻につくと思ったら…派手な格好をした奴が仕事が欲しいとやってきた…。化粧屋のヤミィだ…正直、何となく苦手であまり関わってこなかったが、アグルの野郎…「賑やかなのはいい事だ。2人で組んだ方がいいだろう」と勝手に決めて話をつけやがった…。
依頼先へ向かう道は想像以上に困難だったが、それ以上に隣に居る奴が厄介だった。何をやるにも直感で動きやがる。雑な上に慎重さもない…私の話も聞きやしない…ああ、本当に…
…最悪…
面白い仕事を流してくれると聞いて、丁度スリルを求めてたから、アグルっていう男の元へ向かったの。早速扉を開くとやたら火薬の匂いが鼻につくと思ったら…野暮ったい作業着を着た子が既に部屋にいたわ。ウェポンショップのジーグ…内心、どうも気が合わなさそうで付き合ってこなかったけど、アグルったら「面白い組み合わせだ!いいじゃねぇか。旅路は賑やかな方がいい」ってどんどん話進めちゃって…。
依頼先へ向かう道は思ったよりヘビーだけど、それ以上に相棒が厄介なのよ!何をするにもいちいち考えたがるし。やたら細かくてスピードがない…私の話も聞かないし…ああ、本当に…
「合わない!!」
2人は同時にピッタリと叫んだ。まるで似ていない容姿と雰囲気だが、傍から見ると双子だろうかと思うほど、2人は同じタイミングで嘆き、怒り、叫んだ。阿吽の呼吸とはこの事か。
いがみ合いながらも何とか依頼先にたどり着いた。そこは何もない砂漠地帯だった。既存の街が襲われた際には理事会や軍が動くのだが、その地に住む者を祓ってまで街を建てる事には協力しない。そこで、裏稼業の出番という訳だ。この地を拠点に貿易をしたいと考えている部族が居るのだが、この砂漠には主がいる。何人もの仲間が食い殺されたという。ジーグとヤミィはこの主の退治を依頼されたのだ。
「ねぇ、喉が渇いたわ!乾燥はお肌の大敵なんだからぁ!どうにかしなさいよ、ジーグ」
「なぁ!静かに出来ねぇか!!!…ったく、このだだっ広い砂漠で主をどう探すんだよ…!」
イラついてジーグは大声で叫んだ。
「私、無駄な時間って嫌いなのよね…ふふ、ジーグの喧しさと私の美貌に引き寄せられたわね…」
ゴゴゴゴゴ…地響きが彼方から凄い勢いで迫ってくる。まるで水の中を泳ぐように尾をくねらせ砂の中を縦横無尽に進んでいる。それは砂を巻き散らせながら地中から高く飛び上がった。
「来やがったか!こいつが…アーマーン!!」
人を数人は軽々飲み込めそうな大きな口を広げ、ワニの姿の魔獣が2人に襲いかかる。
「雷鳴の士に仇なす者に鉄槌を!打ち砕けトール」
雷撃が空から鋭く何本も落ちる。しかし、1発当たっただけで砂へと逃げられてしまった。
「細かい性格の割に、攻撃は大振りなのね」
声を上げるヤミィにうるせぇ!と返すジーグ。単一魔法は強い分制御が難しい。ヤミィは次は私よ!と言わんばかりに前へと出る。
「知恵の保持者、我ら全ての母!哀れなる者はその言葉を解さず、目は塞がれる…」
砂に潜ったアーマーンを黒い炎が妖しく取り囲む。暫くは魔獣の動きは止まったが、直ぐに暴れ出すと炎をかき消してしまった。
「派手な性格の割に、火力がねぇなぁ」
小声でボヤくジーグにうるさいわね!と返すヤミィ。ジーグは少し腕を組み考え込むと、ふむ…と気だるげに指示を飛ばす。
「砂に逃げられると面倒だ。私が銃で退路を塞ぐ。お前は確実に攻撃を当てろ、いいな」
偉そうに!と言い返したかったが、アーマーンはまた大口を広げて砂を掻き分け襲ってくる。悠著に構える暇はない。
「大いなる神山より焔もて降り立て!浄化せよキュベレー!!」
顔を焼かれ、砂から飛び出る。そこをすかさず氷の魔法銃で応戦するジーグ。魔獣は恐ろしく素早かったが、ジーグの的確で素早い射撃、リロードのおかげで大地は凍りつき逃げ場を失ったアーマーンは連撃の業火の餌食となった。
耳が裂けそうな断末魔。何とか倒せそうだ…そう思った時だった。死を目の前に底力を出したアーマーンは凍った砂をかち割り、凄まじい勢いでジーグへと泳ぎ出した。
「ジーグ!詠唱して!!」
「…でも、魔法が外れたら」
「信じて!!」
「轟けトール!!」「燃え上がれキュベレー!!」
秒刻みの世界だった。魔獣はジーグを噛み殺そうと口を閉じようとしていた。ジーグが放った雷撃を誘導するように炎が稲妻と同化し、炎を伝ってトドメの一撃が魔獣を貫いた。
横たわる魔獣、ヘトヘトになり2人座り込む。
「なぁ、あの状況で攻撃をサポートするなんて、どうやって思いついたんだ?」
「んー…勘よ。やった事ないけど出来るかなって」
…あぁ、やっぱり気が合わねぇなぁ…。2人はクスクスと笑い出した。
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ジーグ、ヤミィ両名の柘榴石をひとつ消費しました。
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