✩.*˚お披露目LIVE✩.*˚
Amusing feast
✩.*˚お披露目LIVE✩.*˚
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6月。桜も散り、鮮やかな新緑が日光に照らされ、学校へ続く坂道には木漏れ日が差している。日差しが照りつけ、肌にはじんわりと汗が滲む。
入学式から月日は経ち、新入生達は少しずつ学校生活に慣れ始め、中には仲の良いグループも出来始めている時期だ。
ここ、十二招宴高等学校は、由緒正しい音楽学校である。そして今年度から、新たにアイドル学科が設立された。
だが、このアイドル学科は正式に設立されたものでは無い。
事の成り行きは、臨時講師で元アイドルの神崎帝が理事長に直々に発案し、何故か通ってしまった事から始まった。なんとも、理事長と神崎は昔馴染みで付き合いが長いらしい。そのよしみもあってか、神崎の案を快く受け入れてくれた、という事だ。
だが、正式な設立にはある条件がだされた。
―――卒業後一期生達全員をデビューさせること―――
神崎帝は迷わず首を縦に振った。
時は戻り…
校舎に隣接されている特別棟にある多目的教室。そこがアイドル学科、彼女達の教室である。
――ガラッ
「よーし、席につけぇー。HRを始める。」
彼女が臨時講師の神崎帝。アイドル学科の発案者である。
「君たちの担任の先生はお披露目会の準備真っ最中だ。なので、臨時に私がHRを始める」
『お披露目会??』
教室にいる生徒全員が神崎の言葉に首を傾げた。
どうやら生徒達には何も知らされていないようだ。
「ああ、そうだ。来週の全校集会に、私達アイドル学科のお披露目LIVEを開催する。」
「来週!?何考えてるんですか!いくら何でも急過ぎます!!」
「馬場さんの言う通りです。第一、曲も衣装も何もかも準備の無い状態じゃないですか。無謀すぎます。」
「ああ、そうだな。如月の言う通りだ。だが、お前たちに歌ってもらうのは他でもない。入学試験の時に歌ってもらった楽曲だ。衣装も、全校集会の場だから制服で歌ってもらう。ほら、な?出来るだろう。」
さも当然のように言い放つ神崎の突拍子のない言葉に生徒達は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている。
「あの…でも、私達、人前で歌うのは初めてですし…なんていうか、その……心の準備が……」
「わあ!未来ちゃん大丈夫?顔が沸騰してるよ?」
「大丈夫、ありがとう寿羽ちゃん…」
「そうですね。まだステージに上がった事が無いのに、いきなり1週間後にLIVEやります〜なんて、ちょっと無茶な気がします…」
弱気になってしまった生徒達の声が聞こえる。渡辺を最後に皆黙ってしまった。神崎が何か言葉を放つより先に亥角が口を開いた。
「まぁでも、それもありなんじゃん?面白そう。」
「ば、場数を踏むのも大事だよね。」
「織部、顔硬いよ〜?結季みたいに眉毛もつりあがっちゃってるし」
「私みたいって何よ!!!ば、こら、やめろ千鶴!」
「いいじゃんいいじゃん!アイドル学科最初の試練!私そういうの大好き!」
「そうですよね!どっちみち、いつかはステージに立たなければならない…ここでうじうじしてても何も始まらないですものね。ええ!!やってやりましょう!!」
虎嶋が立ち上がりキラキラした表情で言った。
続いて猿荻も立ち上がり両方の拳を挙げている。やる気満々だ。
「ま。そう言うことだ。まずは場数を踏め。そこで躓いても成長に繋がるいい機会だと思って吸収しろ。自分の力にしろ。お前たちに課せられてる時間は長くない。だから、少し荒療治な事も必要だ。」
「うんうん!そうこなくっちゃ!いっぱいステージに立って、いーっぱい陽香の可愛い所、皆に見てもらわなきゃね!」
「ああ。僕達の溢れんばかりの魅力を全校生徒に披露してやろう。」
「そうと決まれば、早速練習ですね!皆、一緒にがんばりましょう!」
「待て待て潮、やる気を出してくれるのは大いに結構。だが、無理して体は壊すなよ。あと学生は勉強が本文だ。日中は変わらず通常授業だから、しっかり勉強しろよ。以上。HR終わりー」
まだ不安の者、やる気に満ちた者、落ち着いた表情を見せる者。
各々色んな気持ちを抱えたまま、お披露目LIVEへ向けて猛練習が始まった。
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BGMお借りしました。
https://nana-music.com/users/1357619
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