the Beautiful World
リリー&サフラン
the Beautiful World
- 84
- 6
- 0
白茶けた曲がりくねった山道を
1台のトラックが砂埃を立てながら走る。
そのトラックの荷台、色とりどりの織物の入る
木箱の上に座り込む二つの人影。
「リリー!何見てるんだい?」
トラックの荷台の振動もものともせず、
サフランは身軽にひょいひょいと
傍らにやってくるとリリーの手元を覗き込んだ。
少し肌寒いため山の麓で買っておいた
赤のストールを頭からすっぽりと被っている。
「ん?これはこの国の地図だよ」
同じくお揃いの柄の青のストールを巻いた
リリーはほら、とサフランに地図を見せた
「この前船を降りた港がここ。
だからこの山を越えていくと…首都に出る」
地図の上で指を斜めに滑らせると、
指は山の凹凸を抜けて
赤く塗られた丸印──首都へとたどり着く。
「山を越えるのに三日はかかると思ってたけど、
これなら明日には首都につけそうだね」
「本当かい?この車のおかげだね!
おじさん、乗せてくれてありがとね!!」
荷台から身をのり出し、手を振り始めた
サフランの服を慌ててリリーが掴む。
人の良さそうな恰幅の良い運転手の男は
サイドミラーごしに微笑んでみせた。
その見た目通り、山道にへばっていた二人を
車を停めて拾ってくれた親切な人だ。
「で、その次は!?どこに行くんだい!」
荷台に引っ込んだサフランは目を輝かせて
子供のように話の続きをねだる。
「うーん、どうしようね。
北に行ってまた海を渡ってもいいし、
南に行って野生の動物たちを見るのも
楽しそうだよね…サフランはどうしたい?」
「えぇっ!そんなの…どっちも楽しそうで
あたい決められないよ………!!」
「あはは、そうだよね。
じゃあ……うん、行先は天に任せよう」
そう言って取り出したのは金色のコイン。
「表が出たら北、裏が出たら南だよ」
サフランが頷いたのを見届けて、
コインを空中へと投げる。
と、その時。
ガタン!振動で荷台が大きく揺れる。
小さなコインはリリーの指先をすり抜け、
荷台へとそのまま弧を描くように落ち、
「「あ!」」
コインはあちこちに傷のついた古びた荷台の ちょうどひび割れた隙間に
すっぽりとはまっていた──縦向きに。
「ありゃ……リリー!縦になっちゃったよ!」
「…あははは!これは仕方ない」
リリーはコインを拾うとにっと笑って見せた。
「こうなったら、どっちも行くしかないね」
「……!うん、うん!そうだねリリー!」
「わっ!サフラン!
いきなり飛びついたら危な……わぁっ!」
赤と青のストールはもつれ込むように
色とりどりの木箱の後ろへと消え、
そしてほんの少しの沈黙の後、
二人分の笑い声が青空に響き渡った。
トラックはどこまでどこまでも
二人の笑い声を乗せて、走り続ける──
#EQCENTRIEQUE #リリー #サフラン
-------------------------------------------------------------------------
遠くで降りだした雨
だれかが濡れながら
そっと震える
山を抜けて 雲をたしかめ
風にふれて 星と出会った
そして旅は続いてる
so the Beautiful World
ボクらは行く
ちいさな声
so the Beautiful World
聞こえるから
世界を走る
Comment
No Comments Yet.