花マフィア外伝 キスツス
--
花マフィア外伝 キスツス
- 20
- 0
- 0
「よし、ハナズオウ拾いに行こう」
私、キスツスは息巻いていた。
端的に言おう。
わたしはハナズオウちゃんの顔面が好きだ。とても好きだ。無限に眺めてぐりぐりしていたい。
と、これは置いておいて。
話は少し前に遡る。
あらゆる物事は永遠には続かない、と最初に言い出したのは誰だったか。
キスツスが所属していた組織は、ある日キープアウトの黄色いテープを引かれ封鎖されていた。
おざなりに貼り付けられたビラには「解散」の文字のみが書かれている。
事後報告にも程がある、あまりにも唐突なことだった。
そして仮にも政府組織とはいえ、グレー中のグレーな存在の組織。失業保険などあるはずもない。
事実上の完全無職宣言である。
嗚呼、せめて貯金をしておけばよかった。
急に痛んできた頭をおさえてほかのメンバーの事を思案する。
普段からおちゃらけている人達ではあったが、みな優秀だ。
文句を言いながらもなんだかんだで新しい場所を見つけるだろう。
だが
「ハナズオウちゃんは…ダメだろうな…」
キスツスが焼いたクッキーを貪っていた間抜け面を思い浮かべる。
うん、確実にまともな道へは進まないだろう。
あれよあれよとアウトロー待ったナシだ。
しかしもったいない。彼女の顔は1級品。
小柄であることも相まって、黙っていれば人形のようなのである。黙っていれば。
かくいう自分も今更コツコツとOL、なんてしようものには3日でケツを割ることはわかりきっていた。
ふとスマホに表示された広告が目に付いた。
ごくごくありふれたアイドルのCD発売のCMである。
「…これだ」
天啓のようなものを感じたキスツスは、くるりと踵を返して歩き出した。
単純なあの子のことだ、恐らくはあそこにいるだろう。
「よし、ハナズオウ拾いに行こう」
Comment
No Comments Yet.