カスタードエクレア
声劇
カスタードエクレア
- 144
- 4
- 0
貴女はどこに行ってしまったのでしょうか?
台詞
一口。たった一口食べただけだった。
目の前に新しい世界が開いた気がした。
むせ返るような甘いチョコレートの香りと蕩けるように切ないカスタードの甘みが、私の味覚と嗅覚を蹂躙した。
圧倒的なサクサク感。
倒錯的な口溶け。
どれひとつとっても、魅力的で妬ましい。
私は、おもむろにエクレアを頬張る。
あぁ、エクレア。お前を食ったのは、私だ。だが、お前の破壊的なうまさは、私が喰われてしまったと勘違いしてしまいそうになるよ。……そんな風に声をかけながら、私は目を瞑る。
二口目を頬張る。
なぁ、エクレア。お前はなぜ、こうも美味なのだ。今まで食べてきたお菓子はまやかしだったのか。そんな疑問が口から出そうになり、
あわてて、口を噤む。
カスタードを一滴もこぼさないように。
目を瞑れば瞑るほど、意識はより深く味覚は鋭さを増し、嗅覚は犬もかくやというレベルに達する。食事という概念を超え、さらに深く、より膨大な情報を脳が舌と鼻に寄越せと命令を出そうかという瞬間、すべての情報が途絶える。
何故だ。ワたしは、より深くエクレアを感じていたかったのに……
涙を流しながら目を開けると、そこにエクレアの姿はなかった…….
#声劇 #台本 #声劇台本 #一人声劇
#BGM #切ない #オリジナル
Comment
No Comments Yet.